落花流水
□初夏の眩しい陽射し
1ページ/4ページ
「……暑い……」
夏休み前の期末テストを学年1位で終わらせ、終業式まではフリー…今は本社ビルの総帥室にいる。大きめの窓から初夏の陽射しが入り込み、涼しいはずの部屋を暑くさせる。夏季休業を挟むと、3月まで日が少ない。本社機能を全てアメリカに移すには時間が足りない。
「……来月、一度向こうに行かなければ……」
頭が痛い……ストレスが半端ない。窓から望む街の風景をボーッとしながらみていた。
終業式までの少しの休み。突然会議室に呼ばれ行くと、そこには懐かしい面々が揃っていた。
「全く。やめて欲しいよね、まだ仕事回りの最中なのに。」
「……やめないか、総司。俺とて仕事中だ。致し方ないだろう」
「そうか〜?俺は学校サボれてラッキーだけど。な、千鶴〜〜?」
「え!…そんな……」
総司、斎藤……平助に、なぜか千鶴まで?元新選組の面々を揃えるって事は、そういう物を撮るんだろうが……ナゼ千鶴?持ち上がる疑問を整理していると、関係者達が入ってきた。この間ポシャったwave、若手俳優の…有名どころ2人。それに、監督やら助監督…そして女優が1人。って事は鬼も関わったあの時の話か?そうなると人数が足りない。それに風間千景が来ていない。
「では物語の説明を。話は新選組が結成……いや、会津藩から拝命される前の話です。まぁ、土方歳三とある花魁の恋物語…………あれ?花魁は、彼女ですか?」
全員の視線が千鶴に集まる。本人もキョトンとしている。口をきったのは意外にも総司だった。
「彼女が花魁な訳ないじゃない。どこをどう見たらそうなるんです?」
「え!……あ〜〜っと…じゃ彼女は誰かの連れなのかな……いや、参ったな……」
監督が頭を抱えていると会議室のドアが開いた。
「遅くなり申し訳ありません……。」
俺と原田の視線が固まった。入って来たのは……以前、ルイを連れ去った赤毛の男と初めて見る金髪の男。
「あ!神堂さん、折原さん!来てくれてありがとうございます。有難いんですが……花魁が来ていない「心配いりませんよ、監督」……それはどういう?」
「花魁は、此方にいる」
赤毛の男は何処かに電話をしている。しかも英語で話しているもんだから、何を話しているのか……サッパリわからねえ!苛立つ気持ちを抑えていると、隣から原田が話しかけてきた。そういや此奴、英語教師だった。
「……今から会う約束してるみてえだな。ところで土方さん……花魁に恋慕してたのか?つうか、覚えてるか?」
……新選組となってからいろいろあり過ぎて、その前の話なんて……覚えていない。あの頃は浪士組としてどうしたらいいか、何かと画策していたからな。
「……わからねえ……。」
恋慕していた花魁とやらに逢えば、思い出すかも知れねえが……。その花魁も、覚えているかどうかなど、知るはずもねえ。