落花流水

□離島にて
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真夏の暑さに耐えられず、涼を取る為…セブ島を訪れている。…8月に入って直ぐ、アメリカに飛んだ。新社屋の建設具合も…あまり良くない。後半年足らずで仕上がるのか?良くも悪くも不安に駆られる。深い溜め息が溢れる。

「……どうした?体調悪いのか?」

背後から声をかけられる…何故この人も一緒なのか?折原さん曰く……働きすぎなんだよね、主題歌もリリースして落ち着いたから、ルイちゃんのお伴で連れ出して?……って。一応、私も嫁入り前の娘なんだけど?

「いえ……体調は良好よ?ただ、新社屋の建設がね……。遅れてるみたい。早ければ2月には移したいのに。」

「向こうはルーズだからな。日本人のようにはいかないだろう。」

コーヒーを渡してくれながら隣に座る神堂さんをみていた。6月の雨の降る夜に、この人に告白されたのを思い出していた。
『君を誰にも渡したくない。俺と共に生きてくれないか』
……あの頃はまだ想いを引きずっていたから答えを出せずにいた。でも、もう前を向いて歩き出した…そろそろ本気で考えないと。目の前に広がる綺麗な海原を見た。

「……神堂さん、そろそろあの日の答えを出さないとね……。」

同じ海原を見つめたまま、ああと相槌をうつだけだ。

「……あの「急がなくてもいい」……え?」

「今はまだ前を向いて歩き出したばかりだ。ルイの想いも全て、自分のものにしたい。……独占欲が人一倍、強いらしい。」

珍しく顔を赤らめている。今、折原さん達が居たら…確実に冷やかしの的だ。

「……ありがとう、神堂さん」


気持ちが落ち着くまで待つ、その事が妙に嬉しかった。





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