落花流水

□お伽話
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待っても待っても、ルイがこない。窓の外を眺めると…また校門に紅い車……っ!

「…原田っ!車だ!」

自分の車のキーを掴み、玄関まで走り下りた。既にルイは車に乗り込んだのか、紅い車が走り出していた。

「逃がさねえ!!」

原田を隣に乗せ、紅い車を追いかけた。万が一、追いつけなくとも…居場所さえ押さえればいい。しかし…そこら中を縦横無尽に走られても……。走り続けて十分後…見事に巻かれてしまった。

「っくしょう!何処に行きやがった!!」

「…見渡す限りじゃ……あのバカでけえマンション…か?」

目の前に聳え立つ一つのマンション…。ここに消えたのか?







『ったく…しつこい。神堂さん、あのマンションに入って。セキュリティがしっかりしてるから、地下に入れば大丈夫。』

ルイの指示通り、警備員に会釈をし中に入った。何百世帯が入居しているのか…駐車場は広かった。

『車を変えましょう…まだ見張っているかもしれない。』

ルイに渡された車のキー。BMW…彼女が持つにはまだ早い気がするが、スタジオで待っている夏輝たちを考えれば……ヒマはない。俺は急いで車をだした。




『…疲れた…少し休ませて』

無表情で入ってきた春とは違い、ルイは疲労困憊。。かちゃりと音がした方を見ると春がいつものように車のキーをテーブルに…?

「あれ?BMW?」

冬馬がいち早く反応した。

「…彼女の車だ」

…あれ?彼女まだ高校生だよな?お金持ちのオモチャか?

『……好きな人と同じモノを持ちたかった……』

彼女が窓の外を眺めながら話し出した。その姿はどこか寂しくて、オトナのオンナ。守ってあげたいというよりも、守らなければいけない…そう思わずにはいられなかった。ゴメン、春……俺、彼女に捕らわれてしまった。

『……今から話すことは夢物語だと思って。……前世の記憶。時は幕末で…京都祇園の叶屋に花魁として私は日々過ごしていた。ある時から一人のお侍さんが贔屓にしてくれて…恋仲になるまでそう 時間はかからなかった。でも、突然別れを切り出された…命の掛け場所が出来たとか。それから一年ぐらいして私は水揚げされたわ。お侍さんへの想いを抱えたまま……他のオトコのもとへ、ね。』




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