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□最後のさようなら 前編
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『人間の時の私達って、どんな感じだったのかな?』

広く白い広大な砂漠で、大きな白い影と、小さな白い影が伸びている。
今日もいつもと変わらぬ三日月が、二人を照らしていた。

「さァな。興味ねぇよ」

大きな影は、近くにある白い月桂樹のような植物を指で弄んでいる。
しゃがんでいても、その大き過ぎる体躯は目立っていた。

『そっか。でも、あなたは生前私と付き合っていた人だっていうのは覚えてるよ』

小さな影は、その彼の姿を横に並んで愛おしそうに眺めていた。

「…そうかよ、と言いたいところだが、俺もテメーの事覚えてるぜ。そんなに真っ白じゃなかっただろうけどよ」


ふふ、と顔を合わせて笑う二人。


『名前…、人間だった頃の名前は覚えてないけど、今私はさんたてれさっていうの』

そう呼んでほしいなと彼女は付け加えた後、男にも名前を問う。

「俺はノイトラだ。テメーには特別に、俺の事呼び捨てで呼ばせてやってもいいぜ?」

『テメーじゃないよ!ノイトラ!』

途方も無く久しく会い、互いに自己紹介をしたにも関わらず、名前を呼ばない事に反論する。

「チッ…さんたてれさ」

不服そうに低く唸るように名を呟くそれは、感動の再会とやらには程遠い物だった。

『すっごく、嫌そう』

時折風が流れて行く音以外、無音のこの世界で、二人の周囲だけは話し声も笑い声で賑やかだ。
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