サイコパス夢

□♯02
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「お疲れ様妃梛、交代よ」
「え?璃彩?」

二係のもう1人の監視官の声に時計を見ると退勤時間が迫っていた。
先程の事件の報告書を打ち込むのに集中していたようだ。
たしか少し前に上司である霜村監視官が帰ると部屋を出て行った気がする。

「もうそんな時間だったんだ」
「お疲れさまです。妃梛さん」
「んー!」

ずっと座ってモニターをみていたからか肩が凝っているし体も固い。
チェアの背もたれに体を預けて伸びをするとどっと疲れが出てきた。

「じゃあ、私は官舎に戻るね」
「えぇ、また明日」



仕事後、私はいつも寄るところがある。
非常階段を上がり屋上へ。
どうせ部屋に戻っても寝ることしかしないのだ。
眠くなるまで屋上でなにも考えずに過ごす。



「あれ〜?ひめさまどうしたの?」

大抵この時間は私だけしかここにはいないはずなのに今日は先約がいた。
私のことをおふざけでひめと呼ぶ人物。


「佐々山執行官?」
「おぅ!お疲れさん!」

煙草を咥えながら手を挙げて返事をする。

「こんな夜中に出歩くなんていつから不良のお嬢さんになったんだー?」
「もうずっと前からだよ。私の場所に立ち入ってきたのはそっち」
「屋上はみんなの物でーす」
「そうだよね。じゃあ、私は帰ります」

何も考えずに1人でいたいのに先客がいたんじゃ意味がない。
今日は大人しく官舎に帰ろうと歩き出したら腕を引かれて前に進むことを止められた。

「おぉいちょっと待て。帰ることねーだろうが」
「私は退散するのでごゆっくりどうぞ」
「そんな、寂しいこといいなさんな。お兄さんの休憩に付き合いなさいよ」
「なんで私が?」
「執行官の監視をするのが監視官の仕事でしょうが」
「私は今日の業務を終えました。それに私は一係の監視官じゃない」

掴まれた腕を振り解こうとするもなかなか離してくれない。
そればかりか必死になっている私を楽しそうに笑いながら見ている。

「何が面白いの?」
「いや、いつも涼しい顔して皆から姫扱いされてるあんたもこんな風に感情を出すこともあるんだなと思ってな」

その彼の一言に私は抵抗を止めた。

「皆私の外見にしか興味ないからね」
「それは仕方ない。ここは男が多いからな」

彼らがどういう目で私のことを見ているのかなんてわかってる。
こんな職場にいれば尚更、執行官に至っては監視の目は更に厳しい。
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