外伝短編
□不器用な愛情をその小さな背中に
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──……
「ちょ、ちょっとリヴァイ!?
何してるの!?」
淡々と仕事をこなし、無駄にさえも思える数多の量の書類に目を通し、それをエルヴィンに届けるため訪れた彼の個室にいると偶然入ってきたハンジが目を丸くしてそう言った
「……
見てわからねぇか?」
「そうじゃなくて!
こんな所にいる場合じゃないでしょ!?」
「こんな所とは酷いな、ハンジ」
エルヴィンが苦笑いする
何も知らない彼からしてみれば、酷い言い種だ
「カグヤは!?
カグヤの側にいなくていいの!?」
「必要なもんは側に置いてきた
後は自分でやれるはずだ」
「だからって…!」
「待てハンジ
カグヤがどうしたと言うんだ?」
──……
「ふむ…」
とりあえず状況を飲み込めないエルヴィンにハンジが説明した
当のリヴァイは教える気はなかったのか陰で舌打ちしている
「リヴァイ
この後の内地での仕事は、私とハンジで行こう」
「何?」
「所謂、内地の仕事は主に資金の交渉だ
出来るだけ穏便に済ませたいんだが、そんな顔をされては成立出来るものも出来ない」
「……
どういう風の吹き回しだ、エルヴィン」
リヴァイはエルヴィンを睨み付けた
カグヤに関するエルヴィンとのやり取りは、リヴァイにとって不快と不信を煽らせられるものだ
「お前が考えているようなことではないよ、リヴァイ
あの件に関してはもう話はついたじゃないか」
「……」
「ただ、お前しか頼るあてのないカグヤのことを考えたら気が悪くてね…」
「お前がどんなに厳しい教育や訓練を施しても、彼女はまだ子供なんだ
親や身寄りがいない子供など、この壁の中では数えきれないほどいるが、幸いカグヤにはお前がいる」
「一握りしかない幸せを弱っている子供から摘み取ってしまうのはさすがに胸が痛むものだよ
それに…」
「自分では気づいていないようだが、朝からそんな顔をされては、他の兵達の士気にも関わる」
「……」
敵意剥き出しのリヴァイとそれを受け流すエルヴィン
ハンジもまた、カグヤに関する二人のやり取りなど知らない
カグヤに関して何故かリヴァイの空気が冷たくなったのはわかった
そして、そんな彼にたった今休暇が下りた事も
ならばやるべきことはひとつだ