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□もしも
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腹違いの妹に、
"殺し屋の部屋みたい"と称された殺風景な私の部屋。
そこに、これまた殺し屋みたいな薄気味の悪い男が、長い足を窮屈そうに折り曲げて座っていた。
一応客だし、と思って、自分のぶんのついでに淹れてやったインスタントコーヒーを渡しながら、
「んなにキュークツなら帰ってもいいんだぞ」
と皮肉ってやる。
しかし当の本人は気にすることもなく、私の姿を認めるやいなや「マキ」と私の名前を嬉しそうに呼んだ。
頬を染めるその顔は三十路前の男には見えない。
自分のぶんのマグを小さなテーブルに置いて、男―坂本ジュリエッタの黒い髪をかき混ぜてやる。
彼はまるで猫のように目を細め、心地良さそうな低い声を少し洩らした。
―坂本は、私のことが好きらしい。
会えば"愛してる"か、"マキ"位しか言わない。
其ほどまでに好かれるようなことをした覚えはなかったが、
彼は自分を吹っ飛ばせる人間を探していたそうだ。
彼の隣に腰かけて、自分のぶんのマグに手を伸ばしたとき、ふと思った。
そういえば―
「…あんたさ、もし、アタシより先に…皆口由紀と出会ってたら、あの女のこと……す、好き、に、なってたのか…?」
坂本を吹っ飛ばせる人間…そう考えて、頭をよぎったのは、皆口由紀のことだった。
あの女だって、確か坂本を蹴り飛ばしていたはずだ。
そう思った途端、尋ねずにはいられなかった。…なんでかは、わからないけれど。
私の言葉を聞いた坂本は、目を見開き、口をぽかんと開けて、今にも"きょとん"という擬音が聞こえてきそうな顔をしていた。
急激に羞恥が私を襲う。
「こっ答えたくないなら、いいっ…てゆーか、今の忘れろっ…!!」
「マキ」
坂本が、私の頬にそっと触れてきた。びくりと肩を揺らしてしまう。
坂本はゆっくりと言葉を吐いた。
「…俺は、もしもの話は、嫌いだ。過ぎ去った事柄についてあれこれ言ったところで、どうにも出来ないからだ……だが、これだけは断言できる」
手が、坂本の手が、私の輪郭をなぞる。顔に血が上る。
「そんなマキも好きだ…」
あまいあまい笑顔を浮かべて、低く掠れた声で坂本は囁いた。
答えになってないし、聞きたかった言葉でもなかったのに。
私はなんでか満足感で満たされている。
「…この坂本バカエッタ」
坂本は優しくほほえみ、悪態をつく私を抱きすくめた。
「俺のジェニーは、マキだけだ」
二人のコーヒーが、冷めていく
************************あっっっっっま
初の小説がこんなに甘口になるとは…(・ω・`)
多分もうできてますこの二人
坂本さんの愛を確認したいマキちゃんwwww
坂本さんは会話成立しないんだろなーと思ってできた話
あと由紀ねえさんも坂本さんぶっ飛ばせるけどどーなんだろ?って思いもありましたね
ここまで読んでくださってありがとうございました(^-^)/