お話
□全部熱のせい
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今日私の彼氏である黄瀬涼太は学校に来なかった。
何かの撮影でも何でもなく、風邪を引いたらしい。
涼太に大丈夫かとメールを入れてみた。
『何かもう…ひさびさにヤバいっス…』
こんな感じの何とも弱々しいメールが返ってきた。
両親は出張で誰も居ないらしい…。
何だか心配になった私は、帰りにお見舞いに行くことにした。(笠松先輩にもあのバカの様子を見てこいと仰せつかった…。)
そして、放課後
(冷えピタは買ってきたし…まぁ、スポーツドリンクはお家にあるよね…。)
私は黄瀬家のインターホンを押した。
ちょっと間があって、ドアが開いた。
『あ〜…##NAME3##っち〜。来てくれたんスか?』
出てきた涼太はいつもよりだいぶ赤い顔をしていた。
「うん。って大丈夫なの?
色々買ってきてみたから…はい、取りあえず君は寝なさ〜い!」
お邪魔しまーす。と一声叫んで涼太をベッドに戻す作業へ取りかかった。
ベッドに押し込んで、冷えピタを貼るべく額に手をあてた。
『あ、##NAME3##っちの手冷たくて気持ちいい…』
「はい、目瞑って。寝なきゃ良くならないよ?」
サラサラの金髪をなんどか撫でる。
「ご飯食べてないでしょう?
お粥かなんか作ってくるけど…」
そういって立ち上がろうとした時、
『いやっス。ここにいて?』
涼太はグイッと私の腕を引っ張りベッドに引きずり込んだ。
そして、そのままぎゅうっと抱きしめられて身動きが取れなくなった。
「涼太?離して?」
『やだ。』
熱のせいか、より一層甘えん坊になっている気がする。(まぁ…涼太はいつでも愛情表現は大胆なのだけど…。)
少し潤んだ目が、いつもより高い体温が私をドキドキさせる。
目の前に涼太の胸板が迫る。力を込めても押し返せないそれは、男女の差を分からせる。
そんな近くで顔を覗き込まないで…。おかしくなってしまいそうだから…。
何とか腕から逃れようとじたばたともがいてみたが、無意味だった。
『…寒い…。』
ふるっと身震いしてさらに私は抱き込まれた。
きっともう離してくれない気がする。
ベッドからの脱出を諦めた私は涼太に擦りより、抱きしめ返した。
暖める位は出来るだろう。
涼太は私の肩口に顔を寄せた。
『こうしてると、あったかいし…なまえ良い匂いがする。』
何だ、この可愛い生き物は。
風邪を引いた時、何だか心細くなったりする。
涼太も例に漏れず、そうらしい。
「私はずっとここに居るから…安心して寝て。」
涼太の目が閉じられ、静かな寝息が聞こえ始めた。
でもやっぱり、回された腕の力は緩む事はなかった。
ほっこりと暖かくて何だか私まで眠くなってしまった。
うとうと眠りの世界に引き込まれる。
次に目を覚ました時に涼太が少しでも良くなってると良いと思いながら…。
私が次に目を覚ますと、涼太とばっちり目が合った。
驚愕だった。
「やばっ!涼太が離してくれないから私まで寝ちゃったじゃないっ!」
『うん。##NAME3##っちが抱きしめながら寝てくれたおかげですっかり良くなったっス!』
うっ…。
今思い出すて何とも大胆な事をした。恥ずかしい。恥ずかし過ぎる。
「もっもう!元気になったならもう良いでしょっ!離して〜!」
逃がさないとでもいうように、押さえられて頬にキスをされた。
『残念。また風邪引いたらやって欲しいっス!』
キラキラした目で言われた。
「次はないっ!!」
可愛い生き物だったのは、熱の時だけだったのでした。
(やっぱり、手のかかる大型犬のような奴だっ!)