お話
□アイシカタ
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私はもう3日程外に出ていない。私の彼氏である、黄瀬涼太はたまにこうして私を監禁するのだ。
監禁されるのは彼の住むマンション。ここの中だけに私の活動範囲は限られる。モデル業をしている彼の住むマンションは高級にあたる物件なのだろう。
とても広々としているから…。
監禁といっても私は暴力をふるわれている訳でも何でもない。
ただ閉じこめられているだけ。3日程すると自由に外出する事が出来る。
多分涼太が精神的に不安定になったりするとこの症状がでるんだろう。
私は普段は大学に通っているのだが、その期間は休まざるをえなくなる。
今朝私が目を覚ますと、一緒に寝ていたはずの涼太はもう起きていて、出掛ける支度をしていた。
私はまだ眠くて布団で丸まっていた。
手足はスラッとしていて、隣に立てば彼の顔は遥か頭上にある。
彼の金髪は日の光を受けると本当に輝くようで綺麗で、本当に全てが「綺麗」で構成されている彼。
布団から、彼をぼんやりと見ていると彼は私の視線に気付いた。
『起きたんスか?』
「うん。おはよう。涼太…仕事?」
『うん。仕事が入っちゃったらしくて、出来るだけ早く帰って来るようにするから。
良い子で待ってて欲しいっス。』
彼はそう言うと、そっとキスをした。
「ん…。
ちゃんとここでお留守番してるから…安心して?」
これは私と涼太の間で交わされるお決まりの会話。
ねぇ?君はそんなにも不安?私を閉じ込めておかなければ、自分から離れていってしまうとでも思っているの?
私はこんなにも涼太が大好きなのに。
私の思いはきっと君には届かないでしょう。
今日も君は私の思いを知ることなく出掛けていくんだ。
涼太が心配しないように、今日も私はこの部屋で過ごそう。
一度だけ、涼太が仕事の間に外出したことがあった。
どうしてもその日までに提出のレポートがあったのだ。
それを提出したらすぐ帰った。
涼太から逃げるとかそんな気持ちは微塵もなかった。
しかし運が悪かったのか、私がマンションに帰りついた時に玄関ホールには彼の姿があったのです。
体中の血が凍りついたようだった。
涼太は私の姿を見ると、驚いた顔をしていたがそれは一瞬の事で私の腕を掴んで、歩き出した。
凄い力で掴まれた腕は女の私では振りほどく事は出来なかった。
私が謝罪の言葉を言っても彼は何も言わなかった。
オートロックの玄関を開けると、ズンズンと部屋の進み、寝室のドアを開ける。
そして私はベッドに突き飛ばされた。
涼太が私の手足を押さえ自由を奪ってから、与えられたのは噛みつくようなキス。
いつもは、こんな事はしない。
私の意志を反映しない一方的なキス。
ぬるりと入り込む舌は、熱いのに口元を伝うものは冷たいと感じた。
「ん…ん…!んぅ…!いっ…やぁ!」
体を捻り、顔を背けても涼太の手によって顎を押さえられて唇を与えられた。
響く水音だけがやたらと大きく聞こえた。
キスの嵐がやんだかと思うと、私が着ていたカッターシャツのボタンを乱暴に外し、はだけさせた。
「やめて…やだ。涼太…。」
私の言葉は聞こえていないようで、首もとに噛み付いた。
じくじくと傷口が痛んだ。
それでも、傷口をしつこく舐めてくるのだからたまらない。
パンッ!
どうしても耐えきれなくなった私は思わず涼太の頬を叩いてしまった。
「あ……ごめんなさい…。」
『逃げようとしたんスか?俺の事が嫌いになったんスか…。
嫌だ…絶対になまえは誰にも渡さない!』
涼太が初めて言葉を発した。
私も初めて覆い被さっている涼太の顔を見た。
彼は泣いていた。
金色の瞳からポタポタと涙を流していた。
『嫌だ嫌だ。他の男に渡すくらいなら、俺が殺してしまいたい。』
本当なら私が泣いてしまいたい。それなのに何故あなたが泣いているの。
どうしてそんなにも悲痛な言葉を紡ぐのか。
でも一つだけ分かった。
あなたは全身全霊で私を欲してくれている。
求めてくれている。
それならば答えは一つだ。
『涼太。ごめんなさい。勝手に外に出て。これからは涼太の言う通りにするから。
涼太の事大好きだから…!』
そう言って、私は彼を抱きしめた。
彼はやっぱり涙を流し続けていたけれど、どこか安心したような顔をしていた。
さっきの乱暴さとはうって変わって優しく抱きしめてくれた。
『ごめん』
そう言ったきり何も言わなかった。
きっとこの歪んだ関係はここから始まったんだ。
あなたはきっと狂ってる。
でも私も同じく狂ってるんだ。この二人の関係も、あなたの全ても、愛し受け入れているんだから。
でも、それがあなたなりのアイシカタなんでしょう?
狂愛でした。
ヒロインが好き過ぎて結果的に縛り付けたい。そんな感じですね。
結構怖いきーちゃんが出来上がってしまった…
こんなきーちゃんはどうでしょう?(笑)