お話

□余裕なんかあるわけない
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その後体育館から出てきた玲央と一緒に校舎を歩いている。


放課後の人気の無い校舎が二人の間に会話が少ない事を強調するのだ。


何だか気まずいぞ!


さっき赤司くんが言ってきた事はこれの事だったのか!


どうしよう。遥か斜め上から半端無い威圧感感じる!




私は意を決して、言葉を発した。



「ねぇ…?玲央姉。もしかして怒ってる?」


すると、ちらりと私を見て…



「怒ってないわよ。別に。」


なんて素っ気ない返事なんでしょうか。


(これは絶対に怒ってる!ああ、一体何をしてしまったんだろう。)



私は玲央の怒りの原因を探るべくもう一度同じ問いかけをしてみた。



「嘘。絶対怒ってる。」


すると今度はピタリと足を止めて、私を見た。


「そこまで言うなら、何か心当たりでもあるのかしら…?」


何故かジリジリと距離を詰めてくる。
ここは廊下だ。


これから、私が追い込まれる状況として考えられるのは二つ。


廊下を二人で楽しく鬼ごっこ(恐怖の)して、即刻玲央に捕獲され尋問されるか。


もしくは、今ここで尋問されるか。


(あわわわわわ…)


そうこうしているうちに、すらりとした綺麗な手が私の顎を捉え上を向く事になる。

…とんっ。

背中に触れる壁は酷く冷たい。

もう駄目だ。選択は後者しかない。

玲央から逃げられる気がしない。



『…玲央…?』


話しかけるが返ってきたのは、言葉ではなくキスだった。


顎は上を向かされたまま固定されているので拒む事はできない。


玲央の少し長めので髪が頬に触れるので擽ったい。


息継ぎをしようと開いた隙間から、舌が侵入してきた。


いつもの玲央と全然違う。だって、私が嫌がりそうな事はしない。

『ん…ぅ。はぁ、玲央…!』


「ちょっと、黙りなさい…?」


キスの合間に何とか名前を呼ぶも聞く耳もたず。


代わりに玲央の左手は後頭部にあてられ、右手は私を支えるように抱き締めてさらに密着する形になった。


力の入らない私は、玲央のシャツの背中の辺りを掴んでいるので本当に抱き合ってるみたい。


(なんで…?怒ってるの?)


私は初めて玲央を男の人だと思った。
私の知らない玲央。



すると、キスが止まった。



今まで私の唇に合わさっていた玲央の唇は私の首元に降りていき、ぷつんぷつんと二つほどボタンを外される。



ボタンを二つ開けると、かなり首元をさらす事になる。



玲央の唇が肌に触れる。
多分そこにはいくつかの、玲央の付けた跡が残っているはず。



キスマークをなぞるように触れていく。

時折、ちゅっと音を立てて肌に吸い付き新たな跡を刻んでいく。



執拗に繰り返されるそれ。

きっと胸元は大変な事になってる。



私は怖くて仕方が無かった。


今までされた事がない、どこか強引な玲央。



シャツを掴んでいる私の手がかすかに震えた気がした。



「なまえ…?泣いてるの?」



『ううん…。泣いてなんか…。っ!』



はっとした。

否定しながら、確かめるべく自らの頬に手をあてると濡れていたのだ。




「ごめんなさい。怖かったでしょ?」


玲央は謝り、乱された私の襟元をもとに戻した。



『玲央。何かあったんでしょ。私何か悪い事した?謝るから…もう許して。』



「違うのよ。なまえ、あなたは悪くないのよ。私の問題よ…?」


玲央は今度はちゃんと抱き締めて言った。

さっきのは嘘みたいに優しく、すっぽりと包まれる。


『いや。聞きたい。何があったの?』


すると…しばらくの間があってぼそりと答えが返ってきた。



「…嫉妬よ…。カッコ悪いでしょ?」



私は 嫉妬 という言葉でピンときた。



『もしかして…告白されてる所見てた?』

「そうよ。告白なんてされちゃって…。」

玲央は恥ずかしいのか私と目を合わせようとしなかった。


『でも、ちゃんとお断りしたし、浮気する気なんて全然ないから。私は玲央姉が一番!』



「あら、ありがとう。あなたならそう言ってくれるって。分かってたのよ。でもね、やっぱり不安になるのよ…?」


不安?

私は玲央の事が大好きなのにどうして?とキョトンとしていると玲央は続けて言葉を紡いだ。



「学年は違うし、なまえは自分の可愛さを自覚してないし。そんな無自覚な所も男子は好きなのよ?」



閉じ込めて、俺しか見えない様にしたい位なんだぜ?と思ってもみない愛の言葉を囁かれてしまった。


玲央はさっきの自分がつけた跡を、服の上から撫でた。


だから、まるで確認するかの様にキスマークを付けてたんだ…。私は一人納得していた。






何だか恥ずかしいけれど、私もお返しに背伸びをして囁いた。




















『大丈夫。だってもうあなたしか見えない。あなたがいれば幸せ。』




























玲央姉。嫉妬する的なお話でした。

玲央姉は静かに嫉妬を溜め込んでそう。
一歩間違うと狂愛チックになりそうで大変でした。


いや〜玲央姉いいですよね!
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