お話

□キミに完敗
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『なまえ…。』

熱を孕んだ視線にみおろされる。

そしてそれは私の視線を絡め取って離さない。

腕や腰の辺りはきっちりホールドされていて、動く事は出来ない。

「黄…黄瀬君?」

ぐいっと顎を押さえられ、唇が重なる。

と思ったら、唇の隙間から黄瀬君の舌が侵入してきた。

「…ん…はぁ…。」

キスは随分与えられた筈だけれど、こればかりはなかなか慣れない。


黄瀬君のシャツを握りしめて僅かな抗議。


酸素を求めて口を開くが酸素を取り入れる事は叶わない。

より深く彼を与えられるだけだった。

頭がクラクラしてシャツを握りしめる力が抜けてきた辺りで黄瀬君はやっと唇を離してくれた。


「はっ…っ。大丈夫っスか?」

「っ苦し…っ。
大丈夫…じゃぁ…無いよ。」
すっかり息が上がっていて上手く話せない。



黄瀬君のキスは長い。
キス魔だと思う。
必ず、こっちがフラフラになるまで唇を貪っていく。


黄瀬君の方はというと、息切れ一つ起こしていない。

「何か悔しい…。」

ん?何がっスか?

と笑顔で尋ねてくる黄瀬君。

「何であんなにしといて、苦しくないの…?」


コツンと額をあてて黄瀬君は、『それはぁ…なまえっちがまだまだ俺のキスに慣れてないって事じゃないスか?』

ニンマリと笑いながら言った。

『これでも手加減してるんスから早く慣れて欲しいっス。』




さらりと恐ろしい言葉が聞こえた。
いまので、手加減している…と!?



『もっとすれば慣れるっスよ!』

さらに黄瀬君はキスをしようとする。


「まっ待ってよ!し…死んじゃう…!」


黄瀬君の支配下から逃れようと顔を背け、じたばたと暴れてみる。


『ダメっスよ…。絶対逃がさないっスからね…。』


ちらりと見えた黄瀬君の顔は、キス魔王が降臨していらっしゃいました。

『手加減なんて、してあげないっス。』




後頭部をしっかり押さえられて再びキスの嵐。

「ん……んぅ…。」


私の舌は黄瀬君に早々に持っていかれた。

息を吸うことも出来ないし、だ液を飲み込む事も上手く出来ない。


ちゅ…ちゅ…と聞こえる水音は羞恥心を煽る。

(完全にわざとだっ!!)
何時にもまして、長いキス。

唇を食べられてしまうんじゃないか…。


飲み込めなかった分が口の端を伝っていく。


「ん…んぅ…。やっぁ…。」



いよいよ酸素欠乏により、意識朦朧としてきた辺りで、キスの嵐は止んだ。


キス魔王様はぐったりと力の入らない私を抱き起こして優しく膝の上に乗せてくれた。

体重を黄瀬君に預けて息を整えた。


『どうっすか?慣れそう?』


いたずらっ子のような満面の笑みを浮かべている。

そんな彼にタジタジで
「だ…駄目かも…。多分絶対慣れる日は来ないんじゃないかな…。」


『なんだぁ…残念ッス。でもま、キスの度に恥じらうなまえっちも可愛いんで良いッス!!』


なんだ…じゃあ今のキス攻撃は必要なかったんじゃあないかっ!?


抗議しようと思ったが、疲労により睡魔がやってきた。眠いです。黄瀬君…あなたのせいだよ…。



ぎゅうぎゅう抱きしめられながら、眠りに落ちて行く私。

『ちゃんと…少ししたら起こしてよ…。』

そこは抜かりない私。



眠りに落ちる寸前こう聞こえた気がした。




「キスするのも…抱きしめるのも君だけなんスからね…?」












(だから、君に完敗)














黄瀬君はキス魔っぽそうですね!

きゃっ!(>Σ<)

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