お話

□余裕なんかあるわけない
1ページ/2ページ


私の彼氏、実渕玲央は一つ上の三年生。

皆から「玲央姉」と呼ばれて慕われている。確かに、私なんかよりもずっと女子力があって。

面倒見がよくて、あーあと良い匂いがして、それととっても優しくて。
(スイッチが入っていなければね。)




そんなこんなで、平和に楽しくすごしていると事件は起きた。










「みょうじなまえ。俺、お前の事が好きだ。付き合って下さい。」



放課後の教室。二人きり。


なんと、私はおそれ多くも告白を受けていた。相手はサッカー部の男の子。なかなかのイケメンだと女子の間では評判だ。



同じクラスで席も近かったりして、よく話していたりした。



なかなか話しやすい感じの人なので、嫌いではなかった。





それでも私の答えは決まっている。





「ごめんね…。今お付き合いしている人がいるから応えられないです。
でも、君の事が嫌いとかそういうんじゃないからっ…!

一緒に話していて、楽しかったし多分これからもそう。」




すると彼は驚いた事にニッコリと笑ってこう言った。




「そっか。ありがとな。まさかそこまで言って貰えるなんて。
本当はお前に彼氏がいることも知ってたんだ。」





自分の気持ちをすっきりと整理したかったんだと。




そして困らせてごめんな、と言った。




明日からはまた普通に話してくれな?と私の頭をポンっと撫でて。


教室を出ていく後ろ姿をみつつ私は願う。



彼に私なんかよりもっと素敵な子が現れることを。

(とても優しい人だから、大丈夫だよね…。)













まさかこの場面を己の彼氏様に目撃されていようとは…思いもしなかったのだ。



その後、体育館を覗いてみると男子バスケットボール部はミーティングを開いており私は覗いていた頭を引っ込ませ、しばらく外の段々に座って待っていた。


(遅いなぁ…。)





今日はミーティングだけで後はオフだから、と昨日玲央は言っていたのだけど…。


ぼーっと待っていると。



後ろでドアの開閉する音が聞こえたので振り返ると赤司君だった。



「赤司くんだ。もう終わったの?」



「あぁ、終わった。少し長引いてしまってね。玲央を待っているのかい?」




「あ、うん。そうそう。」



すると、彼は口元に怪しげな笑みをたたえ私の耳元で囁いた。





「何かしたのかい?玲央が珍しく荒れているよ?」


クスと笑い何だか不吉な事を言ってきた。



「っっ!!?」

なんだろう。なんだろう。



でも、嫌な予感しかしない。




「まっ…自分で何とか収集をつけるんだね。」




冷たくかつバッサリと切り捨てる赤司様でありました。




新たに誰かの気配を感じ振り向くと、噂の玲央だった。


「あ…玲央。一緒に帰ろう?」
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ