お話
□余裕なんかあるわけない
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私の彼氏、実渕玲央は一つ上の三年生。
皆から「玲央姉」と呼ばれて慕われている。確かに、私なんかよりもずっと女子力があって。
面倒見がよくて、あーあと良い匂いがして、それととっても優しくて。
(スイッチが入っていなければね。)
そんなこんなで、平和に楽しくすごしていると事件は起きた。
「みょうじなまえ。俺、お前の事が好きだ。付き合って下さい。」
放課後の教室。二人きり。
なんと、私はおそれ多くも告白を受けていた。相手はサッカー部の男の子。なかなかのイケメンだと女子の間では評判だ。
同じクラスで席も近かったりして、よく話していたりした。
なかなか話しやすい感じの人なので、嫌いではなかった。
それでも私の答えは決まっている。
「ごめんね…。今お付き合いしている人がいるから応えられないです。
でも、君の事が嫌いとかそういうんじゃないからっ…!
一緒に話していて、楽しかったし多分これからもそう。」
すると彼は驚いた事にニッコリと笑ってこう言った。
「そっか。ありがとな。まさかそこまで言って貰えるなんて。
本当はお前に彼氏がいることも知ってたんだ。」
自分の気持ちをすっきりと整理したかったんだと。
そして困らせてごめんな、と言った。
明日からはまた普通に話してくれな?と私の頭をポンっと撫でて。
教室を出ていく後ろ姿をみつつ私は願う。
彼に私なんかよりもっと素敵な子が現れることを。
(とても優しい人だから、大丈夫だよね…。)
まさかこの場面を己の彼氏様に目撃されていようとは…思いもしなかったのだ。
その後、体育館を覗いてみると男子バスケットボール部はミーティングを開いており私は覗いていた頭を引っ込ませ、しばらく外の段々に座って待っていた。
(遅いなぁ…。)
今日はミーティングだけで後はオフだから、と昨日玲央は言っていたのだけど…。
ぼーっと待っていると。
後ろでドアの開閉する音が聞こえたので振り返ると赤司君だった。
「赤司くんだ。もう終わったの?」
「あぁ、終わった。少し長引いてしまってね。玲央を待っているのかい?」
「あ、うん。そうそう。」
すると、彼は口元に怪しげな笑みをたたえ私の耳元で囁いた。
「何かしたのかい?玲央が珍しく荒れているよ?」
クスと笑い何だか不吉な事を言ってきた。
「っっ!!?」
なんだろう。なんだろう。
でも、嫌な予感しかしない。
「まっ…自分で何とか収集をつけるんだね。」
冷たくかつバッサリと切り捨てる赤司様でありました。
新たに誰かの気配を感じ振り向くと、噂の玲央だった。
「あ…玲央。一緒に帰ろう?」