短編

□いちごのケーキ
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※同棲設定

「は?なにこれ…」

臨也が一人街から帰ってくると
なにやら、白い箱が置いてある。

臨也はしんと静まり返った部屋に呆然と立ちすくんでしまう。

(箱?取っ手のついた…これは)

箱を開けてみるとやはりケーキだった。
白くて繊細なショートケーキ。等間隔にならんだ真っ赤な苺がまるまると輝いている。

「あ、」
「ただいま、あ、」

仕事から帰ってきた静雄が臨也の手にあるケーキを見て、それから臨也のほうをちらっと見た。

思わず目で問いかける臨也に、悪事が見つかった子供のようなバツの悪そうな顔で静雄は答えた。

「あー、それ、手前に」
「えっどうしたの?ケーキだよね?…しかもこれ」

手作りじゃん、と本来商品ならばあるはずのラベルを探すがどこにもないようだ。ちらと静雄をうかがうとやはり目線をそらしたままだ。

「今日は…なんの日だよ」
「はい?なんの日って…」

『付き合い始めて一年記念』とかそういうものではなさそうだし、そもそも彼はそんな記念日なんて覚えている質ではないだろう。今日は五月、クリスマスではないし…

「おい…マジでいってるのかよ」
「…」

「今日手前の誕生日だろ?」

「…」
「おい?」
「ええええ!?」
「えっもしかして間違ってたか?」
「いや、間違ってないけど…まさか、覚えてるとは」

(しかも祝ってくれるとは…)

臨也は他人から誕生日を祝われるなんて何年かぶりだ。下手をすれば10何年ぶりかもしれない。
もちろんこのような性格が役立って祝ってくれる人がいないのだが。

それに臨也自身も自分の誕生日をほとんど人にいわないので、彼の誕生日を知っている人のほうが少ない。

(シズちゃんにいつ言ったっけ、俺…)

自分でも自分の誕生日を忘れている位なのだから相当である。

「あんまりケーキとかは作らない、し多分臨也甘いの好きじゃないとは思ったけど」

作りたかったんだ、白くて苺乗ったケーキ。静雄はいつもなら絶対に考えられない---ふわりとした穏やかな表情で語った。

そんな顔につられて臨也も、いつもの計算高くずる賢いような人を見下した笑みではない、ふにゃりとした笑顔をこぼした。

事実臨也はそんなに甘いもの好きな部類ではなかったのだがシズちゃんの作ったのなら何でも美味しいよ、なんて新羅じみた甘すぎる言葉はなしにして

静雄の胸にそっと顔を埋める。
純粋な暖かさを素直に受け取って。

「誕生日おめでとう」
「ありがとう」


*****

今年も21歳の誕生日おめでとうございます!
ま、ま、まにあった!

と見せかけて間に合ってなかった!

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