散弾銃

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―――何もかもが、異様だった。



苗木は目を見張ったまま、前を睨んでいる。



舞台である体育館。
学園長だと名乗るモノクマ。
そこから発せられる不気味な程に陽気な声。


全て異様だ。
最早ここは……異界だ。


緊迫した面持ち。
皆の怯えた瞳。
その先に映る―――












―――黒く、大きな棺。












***







「えー、オマエラをここに集めたのは、他でもありません。」


ステージの上でモノクマは、意気揚々とそう言った。白と黒の不気味なクマ、通称モノクマ。学園長と名乗り、何の脈絡も無くここに集まった生徒達へ「コロシアイ生活」を強制する者だ。


「転校生を、紹介する為です!」


その言葉に、集められた15人の生徒はざわついた。


「はいはい、静かに。“入学式の翌日”に転校生なんて!と思うかもしれませんが、そこには深ぁい理由があるのです。」


モノクマはいかにも、といった口調で言いながら、演台から飛び降りた。そして、棺の横に立つ。



―――今度は何を告げるのだ。



苗木は息を呑みながら、その動作を目で追う。そして彼同様に、皆の視線はその棺に釘付けとなった。
不穏で、不吉で、不気味なそれ。

生徒達は、動揺した。
皆は今、殺し合いを強制されている事も相まって“死”に関する物へ敏感なのだ。



「うぷぷ、皆これが何だか気になってるようだね?」


モノクマはポン、とそれを手で叩いた。

黒く大きな棺。
大きく字十字架の記されたそれは、横に倒されているのではなく、立てられていた。さらに、まるで封印でもするかのように、鎖で雁字搦めにされている。

体育館のステージに、棺。
それだけで十分不気味ではあるのだが、皆が目を張る理由は、それだけではない。
その棺は――動いていたのだ。


「気になる?気になる?じゃあ教えちゃうね!この中にはなんと、噂の転校生が入っているのです!―――うぷぷ、良い驚きっぷりだね?それにしても……」


モノクマは顎に手を添えると、グニャリと首を傾げながら棺を見上げた。


「……ちょっと元気すぎない?だってずーっと動いてるし。まあいいや!そんなことより、早速開けてみましょう!ハイ、転校生のみょうじク〜ン?」


名前を呼ぶと同時に、モノクマは鍵を開いた。




次の瞬間、勢い良く扉が開いた。




中に立ち籠めていた煙が溢れる。


その煙を裂くように現れた、頭部。


次に白い肌が見えたかと思うと、途端に全身が現れた。


スルスルと煙を身にまとい、グラリと前方へ傾いたそれ。


煙が後ろへと流れる。まるで柔らかな絹の様に。


煙がすべて身から離れたかと思うと―――




そのまま膝から地面に落ち、
上半身は酷く―――俯いていた。





数人の息を呑む悲痛な声が
体育館に広がった。
























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棺から飛び出す系主人公


       

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