散弾銃

□03
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セレスは再びにっこりと笑みを浮かべ、まるで何事も無かったかのように口を開いた。


「“適応力こそ生命力である”―――早く、ここの生活に慣れるべきですわ。」
「アンタ……頭おかしいんじゃない?ここに慣れろとか……何言ってんの……?」


なまえはほんの少し、江ノ島の声に違和感を覚える。
その台詞は、まるで恐怖や驚愕とは別の……どこか“焦り”を含んでいるように思えたからだ。


「その女はここで暮らしたいらしいな?だったら好きにさせとけ」


大和田は冷や汗を浮かべながらも、苦々しくセレスを睨む。


「だけどなぁ……俺は御免だ!ぜってー出て行くぞ……!」
「うふふ、ではお好きに。」


大和田の形相に怯まないどころか、セレスは小さく微笑んでいた。
なまえはふと、口を開く。






「――ここから出たいのは、誰だって一緒さ。」






その声に、大和田は「あぁ……?」となまえへ向き合う。


「満場一致。利害は一致しているのさ―――素敵だね。」
「何が、言いてぇんだよ」


大和田はなまえの横顔を、じっと見た。少し考える様に怯んでいる。しかしなまえはどこ吹く風と言った様子で、それ以上口は開かなかった。


「で……手掛かりは何もねーの?」
「犯人なら決まってるわよ。よっぽど異常で猟奇的な奴なんだよ。」


桑田の言葉に、朝比奈は憎らしげに言った。奥歯を噛み締め、怒ったように前を睨んでいる。


「じゃなきゃ、私達をこんな所に閉じ込めたりしないもん……」
「そんな感想的な事はどーでもいいから、実際のところ、手掛かりは……」
「あ……あのぉ……」


おずおずとした小さな声に、なまえは目を向けた。
―――不二咲だ。


「……あんっ?何?」


桑田の声に、不二咲はこれ以上に無い程小さくなりながら、それでも一生懸命に口を開く。


「異常で猟奇的な犯人って線から……考えるとさぁ……ひょっとして、犯人って……例の殺人鬼だったりしないよね……?」
「“例の、殺人鬼”……?」


ポツリと零したなまえに、苗木は顔を上げる。


「例の殺人鬼って……不二咲さん、犯人に心当たりでもあるの?」
「心当たりって言うか……ひょっとしたらって程度なんだけど……」
「この際、程度は問題じゃない!発言を許可するっ!」


石丸は機敏な動きで指を指す。それをなまえが避ける。


「う、うん……あのね……皆……ジェノサイダー翔って知ってる?」
「それって……!ネットとかテレビとかで話題になってる連続殺人犯の!?」


苗木は驚いて、不二咲を見た。

“ジェノサイダー翔”
その名を聞いて、今まで口を閉ざしていた十神が口を開く。


「猟奇的かつ残忍な手口で殺人を繰り返す、凶悪殺人鬼……」


その言葉に、なまえは「ああ」と思い出した様に口角を上げた。


「現場にはご丁寧に、必ず被害者本人の血で“チミドロフィーバー”の血文字を残す。まったく愉快な殺人鬼?」
「そう。通り魔的かつ無差別的で突発的な犯行ばかり」
「警察もその足取りを掴めていないんだっけ?」
「ああ。そんな連続殺人事件の容疑者に、ネット上で与えられたあだ名が……」
「ジェノサイダー翔?」


ニコリと笑ったなまえに、十神はふと我に返った。……妙に息の合っていた先程のやり取りを不意に意識したのだ。

十神はまるで、何かを誤魔化す様に咳払いをした。
そして、好奇心に満ちた目でなまえと十神を交互に見ていた朝比奈に、舌打ちをする。

葉隠は殺人鬼に顔を蒼くしながら、「うぅん」と唸った。


「噂では、犠牲者は数千人にも及ぶって話だべ。」


顔面蒼白で苦々しい声を出す葉隠に、なまえは軽くため息を吐いた。


「それは所詮、都市伝説上の話だろう?現実ではそこまで多くないと思うよ。」
「精々数十人とか……それでも異常だけど。」


江ノ島たちの会話を耳ながら、腐川は親指の爪を噛んだ。そして蒼白な顔で、少し離れた場所で離しているそれぞれの顔を見ていた。


「とにかく……常軌を逸した殺人鬼らしいけど……」
「そんな超ド級の変態殺人鬼なら……こんな事を組んだとしても不思議じゃねーってか……」
「でも、確証はないって言うか……ただの推論だけど……」


大和田の言葉に、不二咲は自信無さ気にやんわりと主張する。
桑田がやはり青い顔で、口角を引き攣らせた。


「つーか、そんな奴が犯人だとしたら……ものっそいクリミナルな問題じゃね?」
「……」


なまえは至って冷静な表情のまま、どちらかというと桑田の口から“クリミナル”という単語が出た事に驚いた。


「大丈夫だって!絶対に完璧に間違いなく大丈夫だって!」


不安の満ちた空間。それを打ち破る様に、朝比奈は自信に満ちた声を上げた。


「だってさ、もうすぐ助けもくるんだし!」
「は?助け……?」


腐川は驚愕し、息を詰まらせた。
朝比奈は頬を掻きながら、困惑しながらも言葉を続ける。


「だってさ、私達がここに閉じ込められてから、もう数日が経つんだよ……急に連絡の取れなくなった私達を心配して、そろそろ警察も動き出す頃なんじゃない?」
「確かに、そうかもしれないね。それに、ここに集まるのは“超高校級”。世間を騒がすには十分だ。」


なまえは微笑を浮かべながら、朝比奈に肯定した。朝比奈は大きく、何度もうなずく。
しかしなまえはふと視線を下げ、神妙な顔つきとなった。


「でも―――」
「アハハハハハハハハハハハハッ!!」


突然の笑い声に、ほぼ全員が肩をビクつかせた。


「警察だって……!警察なんかあてにしてんの?」
「モノクマ……」


何処からともなく突如姿を現したモノクマへ、なまえは視線を向ける。
モノクマは余程愉快だったのか、再び全員を嘲笑した。























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♪モノクマ先生の授業

どうでも良い話、
ダンガンロンパはBGMも好きです。

  
  

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