散弾銃

□04
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何処からともなく突如姿を現したモノクマ。まさに神出鬼没だ。
なまえは静かに、そんなモノクマを見ていた。


―――成る程。


そして、石丸に聞いた入学式の様子や、昨日モノクマを喚びだした時の事を思い出す。


モノクマはどうやら、時間や場所を問わず、いつでも現れるらしい。それに……かえは幾らでもそれこそ無制限に存在するらしい。
と、言うことは。やはり遠隔操作されているのか―――


なまえは少しだけ「ふぅん……」と声を零した。


「現れたか……!」


大神は鋭い視線で、モノクマを睨む。
しかしそんな背筋の凍る一睨みですら、モノクマはものともしない。


「オマエラ……警察にはどんな役割があるか知ってる?引き立て役だよ。悪の組織や悪役やダークヒーローの。あいつらがやられる事で、悪役が引き立てられんの。」







「―――ふふっ」






突然隣で聞こえた小さな笑い声に、石丸はハッと目を丸くした。そして石丸は衝撃を受けた様に、素早くなまえを見下ろす。なまえは口許に手を当て、隠す様に顔を伏せながら少し笑っていた。


「なまえ君……!?」
「ああ、ごめん。ちょっと思い当たる節が―――」
「え……?」
「え?あ……いや違うんだ。思い当たる節があった訳では無いよ。」
「?……??」
「―――いやいやいや、思い当たる節なんて断じて無い。断じて。」
「しかs―――」
「断じて無い。――いいね?」
「……」


カッと目を見開きながら顔を寄せられ、石丸はぎこちなくコクリと頷いた。明らかに押されている。
なまえはその様子をしっかり見届け「そう。それで良いよ」と微笑む。なんて悪役じみた顔なのだろう。


「そんな安直な役割しかない警察を当てにするなど、お約束と言えども、どうかと思いますぞ。……っていうかさぁ、そんなに出たいんなら、殺しちゃえばいいじゃーん!」
「アッハッハッハ!!」
「笑うトコ?」


軽快に笑った葉隠に、桑田は、蒼ざめたまま呆け目を見開いた。


「徹底した芝居っぷりに感心してるんよ。」
「……アンタ、まだ言ってんの?」


流石の江ノ島も、呆れた様な声を出す。しかしその表情は、どこか怒っている様にも見受けられる。


「つーか何の用だぁ!?連続殺人鬼さんよぉ!」
「……レンゾクサツジンキー?」


青筋を浮かべ凄む大和田に、モノクマはくにゃりと小首を傾げた。


「変な名前!ドイツ人?」
「オメェの正体は判ってんだよ……!」
「無視無視……」
「無視すんな、コラァ!!」
「はいはい、それでは話を戻して――」








「ねぇ―――」









その凛とした声は、不思議と食堂に澄み渡った。
全員が思わず、なまえを見る。

なまえは真っ直ぐにモノクマを見ていた。
そして―――微笑を浮かべていた。


「つい先刻ぶりだねぇ?モノクマ。」


その言葉に、モノクマは「ドキィっ」と胸に手を当てた。
なまえは身を乗り出して、机へ優雅に手を乗せる。
そしてゆっくりと、指を組んだ。


「僕がさァ、ここに来る前の出来事を、軽く流すとでも思ったの?」


苗木は「あっ」と声を零す。そう言えばなまえは朝食会の前に“野暮用”でどこかへ行っていたことを思い出したのだ。そこでモノクマに遭遇したのだと、繋がった。
苗木は冷や汗を浮かべたまま、なまえへ目を遣った。
そして、再び背筋に寒気を感じる。


「―――ふふ、生憎僕は、そこまで優しくない。」


その笑顔があまりに完璧で、凍りつくようなものであったからだ。
『なまえ君怖いよ……!』と、苗木は密かに身震いした。


「――ねぇ、モノクマ。さっき視聴かk」
「あー!あー、あー!!!!」


モノクマは、遮るような大声を出した。


「どうやら声の調子が良くないみたい。ううぅ、ゲホッゲホ。これじゃ折角の可愛らしい美声も台無しだよォ。」


咽を押さえては咳払いをし、『しょぼーん』等と落胆している。


「という事で―――オマエラ!この続きは体育館で!」


仕舞には片手を去り際の様なポーズで止めるモノクマ。
なまえは呆れた様にクイと片眉を上げながら、「ふん?」と少し首を傾げた。


「えぇー、この後至急、体育館へ集まる様に!!それじゃあ―――」


そこまで言うと、モノクマは一方的に退室してしまった。


「い、行っちゃった……」
「何だったんだろう?」
「何か、逃げるような仕草だったけど―――」


口々にそう言う中、霧切は真っ直ぐになまえを見ていた。


「―――さっき何か言いかけたけど、」
「うん?」


なまえは霧切へ、目を向ける。


「ここへ来る前に、モノクマに会ったの?そして、何があったの?」


鋭い視線から、なまえは目を逸らす。それもやましい事があるからというよりは、とても軽い調子だった。「うーん」というため息とともに、なまえは背もたれへ凭れた。


「それって、今言わないといけない?」
「えっ……?」
「直ぐに判ると思う。取り敢えず体育館へ行かないかい?」


なまえは首を傾げながら、霧切を見た。
目に映るのは、どこか陽気さを覚えるなまえの笑顔。


「えぇ、そうね。」


霧切は無表情のまま、なまえから目を逸らした。
そして素っ気なく、口を開く。


「行きましょう。」











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なまえが朝食会前にモノクマへ会ったことにより
原作とは流れが変わります。
本来ならばこのまま食堂にて、モノクマ先生のお話です。



ところでクールな霧切さん素敵。


    

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