散弾銃

□02
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なまえはそっと、顎に手を当てた。




モノクマが僕達にさせたい事は“絶望”だと言った。それだけだと。
つまり―――


モノクマの目的は
殺し合いそのものではない、という事だ。


ということは、殺し合いをさせる理由は単に
『絶望させるための手段に過ぎない』という事か……。

そしてもう一つ。
『だって、オマエラが必死に真実を探し求める姿も、面白い見世物だしさッ!』という台詞。

確かに“見世物”といった。
これは見世物となっているのか……?


『ボクも楽しませてもらおーっと!』


ボク“も”。ということは、モノクマ以外にも楽しんでいる人が―――


つまり、繋げるとこういうことになる。
『僕達が絶望していくさまを見世物として、それを数名が楽しんでいる……』

しかしこれでは、余りに短絡的すぎる。
それでも今在る情報で、これだけの事を構成する事が可能だ。
そう、だとしても。
第一、こんな
こんな馬鹿馬鹿しい事が―――







―――馬鹿馬鹿しいからこそ、
あり得るのかもしれない。



まさしく
“異常”な―――

















「ちょ、ちょっと待ちなさいよっ!!」


一際大きく響いた怒声に、なまえはパッと顔を上げた。
なまえからほんの少し離れた、すぐ斜め前辺りで江ノ島がモノクマに反発している。


「アンタの言ってる事って……無茶苦茶じゃない!!」
「んぁ……?」


蒼ざめたまま牙を剥く江ノ島に、モノクマは小首をかしげる。


「何が……動機よッ!あたしはあんたの思うままに動くなんて、ヤだからね……!」
「……どうして?」
「どうしてじゃねーよ!大体何で、あたしが殺人なんてしなきゃなんねーんだよ!」
「―――おい、」


なまえは鋭い視線を向けるが、江ノ島は「アンタは黙ってて!」と強く撥ね付ける。モノクマは胸に手を置き、大量の冷や汗を流しながら江ノ島を見ている。


「なんとっ!そんな身勝手な!」
「身勝手なのは、そっちだろッ!!殺し合いなんて勝手にやって!私には関係ないッ!!」


江ノ島は一歩踏み出す様に、強く踵を踏みつけた。握った拳にはよほど強い力が込められているのか、小刻みに震えている。


「目の前の圧倒的な悪の迫力に……正直ブルッてるぜ。だ、だけどなぁ……」


モノクマは青筋を浮かべると、手を顔面へ翳した。そこには鋭い爪が覗く。


「ボクは悪に屈する気はない……最後まで戦い抜くのがモノクマ流よ……どうしても通りたければ……ボクを倒してからにしろーーッ!!」


モノクマは両手を振り上げ、ステージから飛び降りた。そしてそのまま江ノ島へと突進する。
しかし江ノ島は―――


「ぎゅむ……!」


避けるどころか、しっかりと踏みつけた。
そして吐き捨てる様に言いながら、モノクマを見下ろした。


「はい、これで満足?」
「そっちこそ。」


冷たい声でモノクマは続ける。


「学園長ことモノクマへの暴力を禁ずる。校則違反だね……」


その瞬間、なまえはゾッと目を見開いた。





背筋が凍る、独特の感覚。


今まで何度も味わった
あの厭な胸騒ぎ。


そして絶対的な――





――予知。





なまえは地面を蹴った。


「召喚魔法を発動する!助けて!グングニルの槍ッ!!」


その瞬間、江ノ島には何が起こったのか解らなかった。

何か風が霞め
眩暈が襲う

確かに感じたのは






「―――、」





自分を包み込む何かと
強い衝撃だった。




















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ここからメメタァな話。



本来、モノクマがグングニルの槍を召喚するのはもう少し後なのです。
しかしこの連載ではかくかくしかじか、召喚魔法はここで行いました。


          

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