漆黒のキセキ
□負け知らずの変化
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最近、部内の空気が少し変わったような気がする。
部活全体、というよりその中の数えるほどの人間だ。
普通なら日常のように思える行動も些細な変化があれば気付く。
それは、俺だからこそなのか、はたまたそれだけ気付かれやすいほどアイツらがわかりやすいのかそれは定かではないが。
変化が現れ始めたのは、一週間ほど前からだった。
緑間はもともと、可笑しな口癖やお汁粉を懐かしそうに見つめるなど、変化というよりはもともと変だ。
しかしそれ以外のメンバーはどうだろう。
桃井は笑顔でいることが多くなり、マネージャーの仕事により一層精を出し始めた。
青峰は他人と1 on 1をしては誰かと比べるように慎重なプレーを見せ、終わったかと思いきや肩を竦めて焦がれるように息を吐く。
紫原はわかりやすい。最近のお菓子は甘いもの、特にプリン系が増え、無意識に頭に手を置いたかと思えば、我に返って頭を振る。
そして普段、毎日のように喧嘩をしていた灰崎に至っては、この一週間、目に付くような事態を一度も犯していない。
これは一体、どういうことだというのか。
少なくとも一週間前、同時期に彼らに何かしらのアクションがあったのではないかと俺は思った。
部活が停止となった今、それを確かめる術はないが、知ったところで損はないとも思える。
...そろそろ帰ろうか。
将棋部に許可を貰って借りていた将棋の駒を片付けながら、ふと、どこからか聞こえる音楽に耳を澄ました。
流れるように弾かれるその音は、ピアノか。
恐らくは同じ階の音楽室から聞こえてきているだろうそれに、僅かながらに興味を持った俺は、素早く片付けを終えて、閑散した廊下を音楽室に向けて進んでいった。