× Grampus

□だから俺はお前がいい
2ページ/6ページ

突然の行為に戸惑い家を出たはいいが、抱えた気持ちが複雑なまま遙の元を離れて自分の家に帰ることなんてできなかった、などと彼らしい台詞を脳内で聞きながら遙は裏口の扉をそっと開ける。
こちらに背を向けてしゃがみ、空を見上げて時折吹く風に髪をなびかせる姿はどことなく寂しげだが遙はようやく探し物を見つけることができた。
近寄って背後に立つと、真琴の肩がピクリと反応した。

「…真琴、」
ゆっくりと立ち上がって振り返った真琴はまっすぐに遙の目を見つめ、それからいつものように目尻を下げて微笑んだ。
「よくここがわかったね」
「わからなくても自分の家だ。いつかは見る」
「そっか」
「……真琴、ちょっと…いいか?俺の部屋」
「うん」

二人は並んで遙の部屋へ向かった。
お互い気まずいからか基本黙って歩いていたが、遙が真琴の妹弟たちの話をすると、彼は「知ってる」っと言って小さく笑った。

「でも今はハルの方が大事だから」
「…そうか」

部屋に入ると遙はおもむろに上を脱ぎ始めた。
ベッドに腰掛けた真琴はさほど気にすることなくそれをぼんやりと眺めている。
彼らにとってお互いの上半身など、何年も見飽きるほど見てきたのだ。
遙の脱ぐタイミングは真琴も推し量ることが出来ないが、きっと心情の変化と何か関係があるのだろうくらいには予想はついていた。
脱いだTシャツをベッドに投げ捨て、遙は真琴に向き直る。

「脱いで、真琴も」
「えっ」
「いいから」

突然話をふられた真琴は戸惑いながらも言われた通りに従った。
自分のTシャツをたたんで遙の隣に置く。
ついでに遙のTシャツまでたたむという徹底ぶり。
真琴は遙みたいに普段から脱ぐ習性がないので少し不思議な気分でそこに座っていた。
部屋の中で、しかも自分のではない他の人の家で服を脱いだことなど今まであっただろうか。
思い出せる限りではまだない。

「…下も」
「へ?」
「全部脱いで」
「な、なんで?」
「…」
「全部って…パンツも?」

黙ってコクリと頷く遙に、真琴は本気で一瞬眩暈がした。
急に何を言い出すんだこの子は。
さすがの真琴も不信感を隠しきれず眉根を寄せてしばらく考える素振りを見せた。
だが何度聞いても遙は頑なだったので諦めて仕方なく脱ぎ始める。
素尻で再びベッドに座るのは気が引けたため、真琴は遙の目の前に立つ。
遙はキュッと眉を寄せると、一歩前進して真琴との距離をつめた。

「は、ハル…?」
「…幼馴染として、俺のことをどこまで許せる?」
「は…っ」

肩を強く押され、思わずきつく目を瞑る。
次の瞬間には身体はベッドに打ち付けられ、数回跳ねあと遙と布団に挟まれていた。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ