短
□愛の鞭? いいえ、優しさです
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「黄瀬、お前何故そんな問題が分からないんだ。
そんなの基本中の基本だぞ? お前バカだな、救いようが無いほどの馬鹿だ」
「断言しないで欲しいッス!!!」
「ほう? ではお前は他に表現する方法をしているのか?
その低能な脳味噌でよく考えられるものだな? 教えてくれないのか?」
「青峰………貴様、何故途中で数が変わるのだよ!
それに何故方程式が出来ていない!? 一次方程式など、習ったのは一年のときだぞ!?
一体今まで何をしてきたのだよ!」
「あぁ? 生きてきただけだ」
「そんなことを聞きたいわけではないのだよ!
お前は去年一年、一体何を、してきたのかを聞いたのだよ!!」
真面目に勉強したと思えば、聞いてくる質問は低レベルのものばかり。
一気に怒りが爆発した赤司と緑間に攻め立てられ、二人は怖気ずく。
そんな様子を見事なスルースキルを利用して、黒子と紫原はただ黙々と赤司に課せられた課題を解き進める。
黒子は兎も角として、何故紫原がここまで真面目に取り組んでいるかというと、予想はしやすいがお菓子に釣られたためだ。
渡された課題一枚解くごとにお菓子をあげる、と言う赤司の言葉に。 故にまれに見る速さで、次々と問題を終わらせていく。
さらに言うと、髪も結わえているため、どれくらい本気なのか分かるだろう。
「赤ちーん、出来たよー」
「………紫原、普段からそれだけのやる気を見せてくれ。
ということは、十枚解いたのか。 ほら、まいう棒とポテチだ」
「わーい!」
周りに花を飛ばしながらおいしそうに紫原はもりもり食べる。 さすがお菓子の妖精、マイナスイオン放出してます。
しかし、もう一人の天然マイナスイオン発生人物 黒子は未だ課題と睨めっこしていた。
どうやらやっているのは数学のようだ。 国語のときのスピードとは打って変わって、亀モードになっている。
本当は教えたい、いや自分の精神を安定させたい赤司と緑間だったが、馬と鹿に邪魔されて何も出来ない。
故にさらにストレスが溜まっていくのだ。
「だから、それは違うといってるだろう、馬瀬」
「なんスか!? 馬瀬って!!!」
「黙れ、鹿瀬。 さっさとやれ」
「赤司っち、酷いッス!!」
「馬鹿瀬の癖に、そんな漢字を使うな。 図々しい」
「何で、そんなことが分かるんスか!!?」
「青峰………」
「………………んだよ」
「そこは7ではない、どうなったらその数字になるのだよ!!」
「知るか! そんなもの俺に合わせろっての!!」
「貴様が合わせるのだよ!!」
沸点を余裕で突破した彼らに、天使が現れる。
「あの………すみません。
ここ、教えていただけませんか? おかしなことになってしまって………」
そう、数学の課題から視線を上げた黒子だ。 それはまさに天からの使者の如く(←赤司と緑間ヴィジョン)。
しかもその様子といったら、おずおずと手を挙げ申し訳ないようで、困った顔をしているのだから(←赤司と緑間ry)。
それはもう可愛いとしか思えない、思わないものがいたらこの場に連れて来い。
二人は競うように、黒子のもとへ向かう。 放置する形となった馬鹿に、まったく興味は無い。
「すみません、赤司君、緑間君。
ここなんですけど、小数点になるわけありませんよね?」
「ん? これか? そうだ、小数点にはならない。
一問前が少しおかしくはないか? 黒子」
「えっ? ………………そうですね、少し計算を間違ってしまっていました。
わざわざ、こんなことのために教えてくれて、ありがとうございます」
「気にすることは無いのだよ。
それから、話が変わるが、この問題にはもっと楽な解き方がある。 教えてやるのだよ」
「本当ですか? ありがとうございます」
「なら、俺は答えあわせをしておく。
間違いがあれば、すぐに直せるだろう?」
先程とは打って変わって、表情筋を緩々にしながら至福の表情で、黒子の相手をする。
しかも、なんだ、その周りを飛ぶお花は? なんだ、おまえらそんなキャラか?
それに自分たちのときよりも優しくはない? なんで態度が180度違うの?
「ちょっと待てぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
「ちょっと待つッスゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!」
「「うるさい、馬鹿どもが」」
その様子に疑問を持った黄瀬と青峰の叫びによって、お花が吹き飛ぶ。
二人にせっかくの癒しタイムを邪魔されて不機嫌な赤司と緑間に、怖気ずくが負けていられないと睨みつける。
「どうして俺たちと、黒子っちの扱い方が違うんスか!!?」
「テメェら、テツを甘やかしてんじゃねぇよ」
二人の抗議に、逆にキョトンとする赤司と緑間。
なんとなくいい事は起こらないだろうと判断した紫原によって、黒子はその場から離された。
赤司による丸付けも終了しているようで、休憩させても構わないだろう。
最初の約束では、十問解くごとに休憩時間が与えられることになっていたのだから。
「黒ちーん、これあげるから、休もうよー」
「でも、いいんでしょうか? まだ終わっていませんが………」
「大丈夫、赤ちん、全部丸付け終わってるみたいだしー。
それに、ほら、満点だよー」
渋る黒子を自分のほうへ引き寄せ、先程赤司に貰ったまいう棒を一緒に食べだす。
黒子は分からないが、どうやら紫原はあそこで繰り広げられる茶番を傍観することに決めたようだ。
「一体、何のことを言っているんだ?」
「だから、どうして二人は、俺たちと黒子っちで教える態度を変えるんスか!?」
「どうして、と言われてもだな………」
「どもってないで、さっさと答えろよ!!」
赤司と緑間は目をあわせ、二人同時に言い放った。
「「教え甲斐があるほうが、やる気が出るのは当然だろう/なのだよ」」
「なんスか、それぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」
「チックショーーーーーーーーッ!!!!!」
「「自業自得だ/なのだよ」」
その後、馬鹿コンビには本家スパルタ国民も真っ青な厳しさで、黒子や紫原にはケーキのような甘さで、特別授業が続けられた。
そんな日々が一週間続き、黄瀬と青峰が疲弊したのは言うまでもない。
さらに言うと、彼らのテスト結果は、
赤司 学年1位
緑間 学年10位以内
紫原 黒子 平均より上 100位以上
黄瀬 紫原&黒子>x>青峰 100位以下
青峰 ビリから10番目
ようやくテストから開放された、と部活に行ったが、どこからか成績を聞いてきた赤司によって、勉強合宿が模様されることになるのは、もう少し先のこと。
fin.