□君と僕とあの人と………
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2人揃ってベンチに腰掛け、2号とじゃれあう。
初めの頃に比べて、大分慣れてきたようだ。
それでもまだ、一挙手一投足にビクビクしているが。

黒子が2号の前足を動かしていると、火神が口を開く。
まっすぐで真剣そうな目で。


「なぁ、黒子」


「なんですか?」


2号も心配そうに火神を見つめる。
それに気付いたのか、柔らかい笑みを浮かべてから話し始めた。


「これからも………俺たちは、ずっと嫉妬し続けるって思うんだよ。
 勿論始めっから覚悟してたし」


「………しょうがないですよ、僕らも人間なんですから」


「それでも、性別が同じ時点でこうなることは分かってたはずだ。
 オレが何も言わなきゃ、こうならなかったんじゃないかっても思うし………」


「君が言わなくても僕が言って、結局こうなりますよ」


「だよな」


背もたれに身体を預け、雲の綺麗に晴れわたった空を見つめる。
先程までの雨が嘘のようだ。
数度瞬きをして、1つ深呼吸をするともう一度黒子に視線を戻す。


「んなこと分かりきってるんなら、もう振り切っちまえばいいじゃんか」


どうやら、嫉妬に関して考えていたらしいが、どうにも纏まらなかったようだ。
今度は黒子がため息をつきながら答えた。


「………それが出来れば苦労しません」


「そうか? 簡単そうだけどな」


「これだから帰国子女は………」


「いや、帰国子女関係なくね!?」


呆れたような黒子に同調するように、2号までもため息をついた。
犬にまで呆れられるなんて………っ。
火神は虚しくなったが、それよりも先に2号を抱いた黒子が立ち上がり口を開いた。


「………僕も君も、嫉妬したのは分かりました。
 では、ここで宣言させてもらいます。
 僕は君の事となると、女々しくなるようです。
 それでもいいんですか?」


「ハッ、上等! オレも嫉妬深いぜ? それでもいいんだな」


「………はい」


火神も立ち上がり、黒子に笑いかけ、頭を撫でてみる。
先程の紫原に対しては不快感をあらわにしていたが、大丈夫のようだ。
それだけ心を許されていると分かって嬉しくなった。
そのままの状態で、火神は楽しそうに呟く。


「じゃ、もう黄瀬とかに馴れ馴れしく触られんじゃねーよ。
 つか、キセキ全員だかんな」


「それは僕にもどうこうできることじゃ………」


「嘘だって、んなこといちいち気にしてたら、身が持たねーよ。
 出来る限り避けてくれると、ありがたいけどな」


「善処します………では、火神君。
 君は女性に言い寄られたり、氷室さんと意味深な会話をしないでくださいね」


予想はしていたが、記憶のない事を言われたため、火神は頭の上から手を退かす。
不意打ちが成功して、黒子はニヤリと口角を上げた。


「女の方はなんとか………って、来られた記憶ねーけど………。
 タツヤのほうは………」


頬をかきながら、視線を彷徨わせる火神に、今度は黒子が笑みを深する。
兄貴分にまで嫉妬した自分が可笑しかったし。
それに対して、真剣に悩んでくれる火神が可愛らしかったのも事実だ。


「そんなに真剣に取らないでください、僕のも嘘なんですから」


「ったく、だろうと思ったけど………黒子」


「火神君………」


苦い表情を浮かべた火神だったが、2号をベンチに降ろしたことを確認してから黒子の手を引いた。







◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇








次の日、2人が視線を合わせられなくなった。
その理由を知るのは、2号だけだった………。










fin

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