甘い悪魔が囁く。

□#2
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開きっぱなしの窓から、風が通り抜け、枯れ葉と共に冷たい風が舞い上がる。その度にゆらゆらとカーテンが笑ってみせた。


月明かりに照らし出された美しい青年は、前髪をかき揚げ此方をジッと見詰める。何て無気味何だろう。




まるで、誘われているみたいだ。




窓辺に座っていた青年はそこから降り、ぼんやりとそんな事を考えている僕に近寄りだした。


ゆっくりと歩いて来る。


いや、実際は決してゆっくりと歩いては居ないのかも知れない。僕の目にはそう見えただけで。





コツン‥コツ‥




靴の音が床を反響する。

そこで漸く自分の身体が動き出した。

反射的に彼が一歩近づく度に、遠ざかろうと足を後ろへ進ませる。


そんな僕の姿を見て、ふ‥と彼は笑った。何もかもを見抜いているかの様に思えた。



思わずゴクリと唾を飲む。




な、なに‥。
何でこの人はこんなにも余裕と言うか‥慣れた雰囲気なの‥?




「‥ぇ‥」




ドン‥と言う音に脚が何かにぶつかった事が分かった。そのまま僕は後ろへと倒れ込む。やっと考えられたそれにしか頭になかったせいだ。


天井を仰ぎ見る頃には、ふかふかな物が僕を優しく受け止めた。




ふわっと広がる洗剤の匂い‥。





(‥ベッドの上に居るのか。)





そう理解した瞬間、彼が僕を覆うようにベッドに手を突いた。



「‥っ‥!!」





(しまったっ‥!)





…そう思った時にはもう遅かった。
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