甘い悪魔が囁く。

□#3
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『これが消える頃、また来るから…―』



…そう言って笑みを見せながら、夜の闇夜へと消え去る彼。伸ばしたその手は何の意味もなさずに、空を掴む僕の右手。






ここは、夢‥?



ふわふわとした曖昧な空間。綺麗な青年も、あの出来事も。


本当は全部、僕の‥






‥ゆめ‥‥?







「兄ちゃんっっ!」



その声にハッと意識が戻り、目を覚ます。目を覚ましたそんな僕の視界には、どあっぷの哩玖の顔。



「うわっ!り、哩玖!!」



びっくりして、ガバリとベッドから飛び起きる様に起き上がった。



「び、びっくりしたぁ‥ったく朝から驚かせないでくれよお」



心臓に手を置き、ふぅ。と一息ついた。そして安心したのか、呑気なあくびまで出てくる。

もう朝か…んー…何だか今日はいつもより身体がダルいな‥。


伸びをしながら、目を擦る。


カーテン越しから漏れる光が眩しい。今日は良い天気なのかな。この時期はまだ僕が目を覚ます6時辺りでは外は暗いのに。



「そう言えば今日は起きるの早いね」



いつもは僕の方が先に目を覚まし哩玖を起こす、と言うのが僕ら浅海家の毎朝だ。

一体どうしたのだろう。珍しいなァ。


そう思っている僕に哩玖は顔をしかめる。



「はぁ?何言ってんの兄ちゃん!兄ちゃんが起きんの遅いんだろう」



「え?」



その言葉に、瞬きを数回パチパチとさせた。


起きるのが、遅い‥?


まだ寝起きで頭がついていけない僕に、近くの目覚まし時計を今度は顔の目の前に持って「ほら、」と突き出した。


見てみればそこには目を疑う様な数字が…。



「しちじ‥にじゅっ‥‥ぷん!?」



う、



「嘘ぉおおぉおお!!!!」



7時20分って‥あ、あと10分でここから出ないと学校に間に合わないじゃないかっっ‥!


寝起きの、のんびり頭が一気に覚醒するかの様に完全に目が覚める。



「‥や‥だからまだ起きないし良いのかなァ‥って思ってたんだけど‥」



「わわわ‥ヤバいやばいやばいぃいい!!」



急いでベッドから飛び起き、学校へ行く為の準備をする為に洗面所へと急いだ。ドタバタとした足音が床を軋ませる。
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