宵闇と私の一週間
□2日目
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ここに来て2日。
どうやらここは日本と言う場所で、僕らがいたらしきところは、この世界では違う国らしい。
でも言葉が通じる所や、互いの顔立ちからして民族性は近いのだろう。
ただ最も重要な違いは……
「(この世界には妖怪が存在しないこと…)」
彼女に街を案内してもらいがてら、妖気など探って見たものの、全く妖気が感じられない。
この付近にいないとかそう言うことではなく元から存在しない、と言うことなのだろう、と半ば信じ難いことを受け止めた。
「いってきまーす!」
「あ、お弁当忘れてるよ」
「え?あっ!ごめんなさい烏さん!!わっもうバス来ちゃう!!今度こそ行ってきます!」
大学、と言う場所に通っているらしい名無しさんを見送り、家事に勤しんだ。
お世話になる以上、これくらいはやってもいいだろう。と思ったのだ。
時々境内に来る子供と遊ぶんだり、毎朝届く新聞を読み、おばあさんとおしゃべりをする。
本当に何もなくて退屈な絵に書いたような日常だった。
――――――
「雨……」
初日に渡された変な柄のエプロンと黒い運動着。就職して遠くに行っている兄の服だと渡された服は何とも丁度いいサイズで僕が来ていた法衣よりも動きやすく何だかんだでここにも馴染めているので、黙って着ていることにした。
「雨は降るんだ……」
洗濯は既に取り込んでしまい、やることなくなり縁側で空を眺めた。
あっちでもこっちでも雨は降るし、月は昇る。
「名無しさん、傘持って行ってないよね?」
エプロンを適当に投げて玄関に向かった。サンダルに足を通し、傘を二本持ってバス停へと歩いた。
「……あれ、烏さん……迎えに来てくれたの?」
「いけない?」
「ううん!嬉しい」
そして片手に持っていた傘を手渡すと、それは開かずに僕の傘に入った。
「懐いちゃダメだよ」
「何で?」
「おじさん、悪い人だから」
「今はただの居候でしょ」
今は。
こんな無垢な少女をも自分の為なら利用してしまおうとしている僕になんか、懐いちゃダメだよ。
ねぇ、名無しさん。
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