宵闇と私の一週間
□7日目
1ページ/1ページ
「……ふぅー……」
いつもの指定席であるモニター前の椅子に煙草を燻らせながら鎮座していた。
あちらに行く前を全く変わらない場所に戻って来た。
目の前に置かれた有天経文があの一週間は夢ではなかったと物語っている。
「……ニィ博士!?」
「……はいはい。今やりますよ……」
あんなつまらない、絵に描いた様な日常だったけど……面白いぐらい充実していた。
だがやはり、僕には不要で不釣り合いな世界だ。
「あの子も連れてくればよかったかな?」
いい反応が帰ってきそうだ。有天経文も共鳴しているようだし、蘇生実験にも何らかの影響を与えてくれるだろう。
「くくっ……はっははは」
そこまで考えて笑った。
結局は何にしたって僕にとっては"あの目的"を実現させる為の実験にすぎなかったのだろう。
――――――
「桃源郷……ってどんなところだろう」
安直に桃って付くぐらいなら桃が美味しいところ…何て考えもしたが、誰が考えても違い過ぎる回答。
「結局烏さんの名前…聞けなかったし。」
でも烏っぽかった。
だから間違ってはないはず。彼は間違いなく烏だった。
黒い羽を身に纏い、光の中から現れたのに全く光が似合わない。
でも唯一似合っていたのが
「月。」
まるで彼を見守る様に高々と昇る月が……とても神々しくて、似ても似つかないはずの彼に何処か似ていた気がした。
.