短編A

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ピンポーンとけたたましく呼び鈴が鳴り響いた。

こんな平日の昼日中に訪問者なんて新聞の押し売りやセールスでも来ない時間帯だな……何て思いながら扉を開けたのだった。


「はーい」

「こんにちは。」

「こんにちは」


ペコリと頭を下げて挨拶をする彼女につられるように僕も何となく頭を下げて挨拶を返した。

普段から塾の子達には挨拶をする様にと言っているからか、今どきの子にしては珍しく礼儀正しい…と関心していたところで、ふと彼女が何かを手に持っている事に気が付いた。


「き、今日から隣に引っ越してきた名無しさん、です。不束者ですが宜しくお願いします!」


先程よりもずいっと頭を下げられて「引越蕎麦です」と手にしていたものを押し付けられた。

引越蕎麦と聞いて中途半端な時間帯の挨拶に納得がいった。


「不束者って……こちらこそ宜しくお願いします。何か困ったことあったら言って下さいね。あ、僕猪八戒って言います。」

「……ッ……」

「?」


僕の顔を見て停止してしまった彼女を不思議に思いつつも、少なからず好印象を持った自分がいた。





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