短編A
□D
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事の始まりは一つの車の信号無視の事故。
新聞の片隅に小さくしか載らない様なものだった。
乗っていたのは10代の男女二人で助手席側から追突されて、女性の方は即死。
男性は重傷だったものの一命を取り留め、順調に回復に向かっている。
ここまでが偽装に偽装を重ねた新聞に載った、夕方の県内ニュースにもならない記事だ。
この話には続きがあった。
男性が病院から抜けだした。
どこで調べたのか相手がは暴力団関係者でだったらしく事故を起こしたのは組合の若頭。
それで罪を揉み消しにし、剰え部下を刑務所に放り込んで自分はのうのうと日常を生きているのだそうだ。
男性はそこに単身乗り込んだ。
誰も彼の顔を知るものはいない。だが凄まじいに勢いで迫ってくる少年に組の人間はたじろぎ、たった一晩で組を壊滅状態に追い込んだ。
「死んでんの?……」
彼を拾った男は、その後何も詮索せずにただ家に居座らせた。
元々金持ちの家系で育だった三蔵が本業ではない方で警察に行った後、八戒と偶然出逢い三蔵罪を揉み消して今に至る。
―――――――
「なーに?携帯なんか眺めちゃって」
「……いえ。」
「連絡先交換したんでしょ?」
僕の携帯の画面を覗きこんで来た悟浄がニヤリと笑いながらこちらみた。
あぁ、この親友は全てを分かっている。
僕が彼女を花喃と重ねていること。
でも、違うとわかった上で花喃に申し訳なくて行動に出れないこと。
僕が彼女を好きになったこと。
分かった上であえて僕に選ばせようとしているんだ。
"過去"に縛り付けられるか、進むのか、を。
「貴方なら、どうします?」
「さぁ、な」
答が決まった上での質問には答えてくれず、ただ背中を押された。
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