短編A
□その後……。
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「飲め」
そう言われて当たり前の様にグラスに注がれたアルコール度数の低いお酒。
明日解禁になるとは言え、今まで一度もお酒は飲んだことはない。
だが、横目で見えた三蔵先生が顔色一つ変えずにアルコールを口に含んでいるのが大人っぽく見えて、私は手にしたお酒を一気に煽った。
「っ…」
「おい、一気に飲むなよ……」
三蔵先生が止めた時にはもう既に遅く、初めて感じる""酒に酔った"と言う感覚を実感していた。
慣れない酒はまだ舌に馴染んでくれず、苦さばかりを伴う。
アルコール度数の低い酒をグラス一杯分一気飲みしただけで既に気持ちが悪い。
でもそんなかっこ悪いところを見せたくなくて、再びグラスに手を掛けると、そっと手からグラスを没収させられた。
「お前にはまだ早いんじゃねぇか?」
「もう、大人だもん……」
そう言って再び掴んだグラスは、私の手ごと彼に捕らえられ、中身は呆気無く彼の胃袋に収まった。
あ、と言う抗議を口にする前に捕らえられていた手を引き寄せられて、唇が重なった。
「ンっ…」
「っ」
生温くて甘いフルーツの液体が喉を伝う。
一瞬だけ合った目には私が映っていて、距離の近さに羞恥心が込みあげると同時に、初めてキスを交わしたのだとやっと頭が理解した。
「こんなジュース如きで酔ってるようじゃ、まだまだ餓鬼だな」
酒を基準にする訳ではないが、なんだか負けた様な気分だ。
「三蔵先生に大人にしてもらうから、子供でもいいんです」
激しく咳き込む声が隣から聞こえてそちらを見ると、私の飲みかけの甘いアルコールを飲んでいた。
ほら、先生だってそんなジュース如きで……
と言い掛けた時に、深く考えもせずに発した自分の発言を後悔した。
そう言う意味ではない。
と弁解をしたものの、時既に遅し。
ぎらついた野生の飢えた獣の様な初めて見る先生の、"先生"ではない部分を視界いっぱいに捕らえた。
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