短編、番外編

□プロポーズ
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ずっと幼馴染だった三蔵とは、三蔵が高校を卒業する時に


「そろそろ付き合うか」


と言われて、うん、と返事をした。

周りからは、付き合ってるのかと思っていたと言われたが、そう言えば今までは曖昧だった気がする。

2歳年上の彼はまだ若かった私にはとても大人に見えた。
加えてあの美人に仏頂面だ。
いくら幼馴染と言っても怖いものは怖いのだ。



悪名高い一匹狼だった悟浄と、この地区一体を束ねていた奴を一晩で片した八戒と出遭ったのが高校入学。

三蔵の叔母さんが管理している孤児院に悟空が捨てられていたのが、私が小学校を卒業して春休みの頃。


そして悟空が20歳になった。


「ほら、私達が最後だよ?」


こっそりと夜の高校に忍び込んだ。三蔵が卒業する時に皆で高校の桜の樹の下にタイムカプセルを埋めたのだ。

あれから数年経ちほとんど忘れ掛けていた頃、悟空が成人式の同窓会で「桜の樹が切られる」と言う話を聞き……今に至る訳だ。


「遅せーよ三蔵!!名無しさん!!」

「悟浄何なんて、待ってる間に煙草一箱吸っちゃたんですからね」

「なぁ、やっぱ今からでも悟浄さんに乗り換えない?」

「こんなゴキブリ河童やめとけ」

「んだとコラぁ生臭坊主!!」


三蔵に本気で怒る悟浄。それを笑って眺める八戒。同じく笑っていると、とばっちりを食らう悟空。

やっぱり皆あの日から全然変わらない。

そんな4人眺めているのが好きだった。だって三蔵も3人が居るときは心なしか少し楽しそうにしてる。表情だっていきいきしてるし……


「名無しさん何やってるんですか?勝手に開けちゃいますよ」

「あ、待ってよ!」


掘り返されたタイムカプセル。

このお菓子らしきものは…悟空だろうか?

当時の私達の写真と使い捨てカメラのネガを入れててくれたのは八戒だろう。自分の所に一言ずつコメントを入れているのが何とも学生らしい。

そして今も変わらずその銘柄を吸い続けている悟浄のハイライト。

私は……このネックレスかな?確か高校入学祝いに三蔵に貰って、大事だから無くさないようにってこの中に。

今思うと私いつから三蔵のこと好きだったんだろう。


ふとそこで1つの白い…今は微かに黄ばんでいる白かったであろう封筒が目に入った。


「これ…三蔵の?」


はい、と手渡すと「開けろ」と言って煙草をふかした。

何だろう?皆も興味があるのか私の手元を一緒に覗きこんだ。
古くなっている為かなかなか開けにくかった封を開け、中を開くとこれまた古く黄ばんだ白っぽい紙が出てきた。

丁寧に三つ折りになっているそれを開くと…。


「婚姻届…」

「もしかして、プロポーズの現場に居合わせちゃった感じ?」

「もしかしなくても…その様ですね」

「はぁー…俺もう腹減った」

「ちょっとは空気読めよな!このKY猿」


ムードもへったくれもないとか、何か言ってやろうと思ったのに、3人の声が耳に入って来ないくらい喜んでいる自分がいる。

行くぞ、と言い校門へ歩き出す三蔵にどこへ行くのか聞いてみると


「それ、出しに行かねぇのか」


と、前を向いていて表情はわからないが煙草に火を点ける為に灯したライターの火が、三蔵の耳が少しだけ紅くなってたことを教えてくれた。

勿論二つ返事で了承し、式は私の大学の卒業を迎えたら上げ約束をしたのはもう少しあとの事。



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→あとがき
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