短編、番外編
□月詠の舞姫番外編
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「なぁなぁ、前に名無しさんが言ってた太陽と月の話し!あれ、太陽が夕日になれば月に近付くんじゃないか?」
それは、あるひの事。ジープに乗って移動中、珍しく考え事をしていた悟空様を不思議そうに見ていると、唐突にそう言い出したのだ。
「なんの事だ猿。ついに頭沸いたのか?」
「ちげぇよ!前の街で悟浄と八戒が買出しに行ってる時に名無しさんと話ししてたんだ」
「名無しさんちゃん?」
「えっと……天界のお話しを少々」
案の定食い付いてきた悟浄さんに、これ以上突っ込まれない様にと適当に誤魔化した。
「何それ…悟浄さんも聞きたいなぁー」
「僕も興味ありますね」
話さないつもりだった。と言うより悟空様に話したのもほんの戯れだった。
心に刻まれた思い出に一握りの希望を持って話しただけだったから……。
だから今回も深くは考えずに太陽と月の話しをしたのだった。
「それは名無しさんちゃん…。昔の男の話しかい?…つまんねぇーの」
「随分と身分差のある恋愛をしていたんですね…」
「いや、あの……身分差と言いますか……いえ、違うのです!!これは私の話しではなく」
そう弁解を測ったものの、多分弁解にはなっていないだろう。
「それにさ、なんだかその太陽、三蔵みたいじゃね?」
「あ?」
「俺、この話し聞いててずっと思ってたんだよなぁー。三蔵みたいに素直じゃなくて、三蔵みたいに怒りっぽいって。でも一つだけ違うのは」
「?」
「その太陽が夕日になってきたってこと」
「……馬鹿猿が!夕日になったら今度は…月が昇るんだよ」
「そうなのか?」
私を挟んで繰り広げられる攻防戦。心地良くも懐かしさは感じなかった。
だってこんな言い合いはしてないから。
寧ろ新鮮さすら感じる雰囲気に戸惑いつつも、もっとこの人達と居たい。そう感じるようになった。
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