短編、番外編

□初恋後の…
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「三蔵…先生?」

「?」

「もしかして……名無しさんちゃん?」

「あ、悟浄先生と八戒先生も!!相変わらず仲いいんですね」


街中でばったり出会ったのは12年前私が通っていた保育園の先生達だった。


「そう言えば悟空とはうまくやれていますか?」

「卒園した後に悟空パパと名無しさんちゃんママが再婚したって聞いてよー。悟浄センセー狙ってたのに…」


立ち話しもなんだから、と言うことで近場の喫茶店四人で入ることになった。

三人は当時から見れば少々老けたものの、相変わらずの美形でおじさんブームの今はそれに拍車がかかってると思う。


「それよりその制服、あのちょー頭いい進学校なんじゃないの?」

「悟空も頑張って同じとこ通ってるんですよ?」


新一年生独特の皺が少ない制服を見せびらかし、得意気に鼻を鳴らした。


「二人で保育園の先生になろーって言って勉強頑張ってるんです。高校卒業したら付属の専門学校に入って……」

「そんなとこ入んなくとも、悟浄センセーなんて中卒だよ?」

「あ、なんだかんだで僕も中卒ですね」

「え!?」


将来のこと、昔のこと……今のこと。
色んな話に花を咲かせている間、三蔵先生は一言も話さなかった。

本当に私のこと忘れちゃったのかな?

それとももう、仕事じゃないから関係ない?

私はあれからずっと……


「すみません。ごちそうになっちゃって…私一応バイトしてるのに…」

「いやいや。こんな美人になった教え子にお金出させるなんて男が廃るって話しよ」


軽口を叩くも、気になるのは三蔵先生の事ばかり。少し前に保育園の園長先生になったと聞いた。

悟空なんかはたまに遊びに行ってるみたいだけど、私は……卒園の時にした告白が忘れられなくて未だに保育園には行けてなかった。

まぁ、それももう時効だろうけど……先生も歳だし、結婚くらいしているよね。


「三蔵。彼女家まで送ってあげて下さい。」

「何で俺が…」

「いえ……だってずっと待ってたんでしょ?16歳になるの」

「へ?」

「ったく……大人のお守りは有料だぞ?早く行けよ」


ポンと二人に背中を押されて、今まで離れていた距離が急激に近付く。

振り返って悟浄先生と八戒先生を見ると、悪い笑顔を浮かべた大人がいた。

横目でチラリと見上げた三蔵先生と不意に目が合って不自然に反らすと、溜息が聞こえた。


「家、教えろ」

「ぁ……はい。」



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