短編、番外編

□初恋後の…
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「……」

「……」


家に着くまでは時折私が出す方向指示と、ウィンカーの音くらいだった。

煙草を吸っているはずなのに車からは煙草の匂いがしない。
車では吸わないのかな?なんてくだらないことでも考えて無い限り、この状況を耐えられそうにはなかった。


「……あ、ここ…です」

「……」


静かに家の前に止められた車。昔の古いアパートとは違って今は立派な一軒家だ。表札には「孫」の文字。

あの頃とは何もかもが違っている。

三蔵先生が私の相手をしてくれていたのも、私が母子家庭で他の子よりも暗い性格の子だったから。先生が一園児を想うそれとなんらかわりはない。


「ありがとうございます…。えっと…お仕事頑張って下さい。」

「あぁ」


それでは、と言って車から降りようとした時、不意に腕を引かれた。


「二十歳まで待ってやる。あと四年だ」

「……え……」

「12年待った。それ以上は待たねぇ」

「あ、あの……それって……三蔵先せ…」

「俺はもうテメェの"先生"じゃねぇ」


不敵に余裕たっぷりに笑った先生の顔に酷く動揺した。
車の発車間際に渡された紙には携帯番号とアドレスが書いてあった。


「そんなとこに突っ立って何してんだ?」

「なんでもなーい」


あと四年。
四年何て今までの12年に比べたらあっと言う間だ。

貰ったメモをもう一度眺め、嬉しさで歪みそうな顔を隠しながら制服のポケットにしまった。



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