短編、番外編
□愛故に
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「烏哭様。いつになったら殺してくれるんですか?」
「ん〜…」
少し人里から離れた山の中。
そこに私は住んでいた。
一時間程かけて山を降りればまだ異変の影響を受けていない妖怪と人間が共存する町がある。
私は吸血鬼の血を引いているらしく、もう何年かわからない時間を一人で過ごしてきた。
自分で死ぬ事さえ許されず、でも人間の血も入っている様でそこまで喉が血を求める事が無かった。
吸血鬼望むのは1つ。
「いっつもそればっかり……。今日こそははぐらかさないで」
「僕もね、忙しいんだよ」
「だったらこんなとこでお茶なんかしてないで、早く仕事終わらせればいいのに……
そして早く私のこと殺してくれたらいいのに」
永眠。
死こそが究極の愛。
「いっそ実験のモルモットにしてくれたらいいのに」
「ダーメ。君は可愛いから暫くはここで大人しく僕のウサギちゃんになってて?」
「そんなこと言って…本当は殺す気ないでしょ」
「そうかも」
即答された言葉に何となく納得した。
やっぱりモルモットするつもりなんだ。だって吸血鬼のクオーターなんて珍しいから
「殺してくれるって言ったから着いてきたのになぁ……。」
「だって可愛いんだもん。そう言うのっての手元に置いておきたいって言うか、大切にしまって置きたいでしょ?」
飄々とした態度で言うから、絶対に本気にはしない。そう心に誓ってきた。
烏哭様は私に初めて血を与えてくれた人間で、今でもお世話してくれている。
私に勉強やら何やらを教えてくれたのは烏哭様だった。
私の世界は烏哭様が全てと言っても過言ではないくらい。
だから…
「……本気にしちゃいますよ?町に買物行った時に店のおばさんが言ってたんだから。そう言うのは"口説く"って言うんだって」
「あれ、気付いてなかったの?僕ずっと口説いてたんだけどなぁ」
「……嘘。」
「嘘だと思う?」
だってこの人が一箇所に留まるなんてありえないもん。
でも嘘じゃないとしたら……
「信じない。そもそも約束守ってくれない人は信じない。」
「きみのこと殺したら信じてくれるの?」
「そうかも」
だったら一生信じて貰えないかもなぁー
って、いつもの調子で言うから、こっちまで調子狂ってしまう。
でも、そんなところが良くも悪くも私が好きになったところでもあったりする。
だから早く……あなたの手で殺して。私を永遠の呪縛から解き放って。
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