短編、番外編

□昨日の敵は今日の……
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それは旅の最中、偶然紅孩児達に出くわした時だった。


「あの、つかぬことをお伺いしますが、あちらの町のお菓子はもう食べましたか?」

「いえ、まだです。私も気になってはいたのですが…」

「ならよかった。はい」


懐から中くらいの紙袋を取り出し、それを八百鼡に渡した。

何かわからずにそれを開いた八百鼡は、中身を見た瞬間に目を見開き、瞳を輝かせたまま名無しさんを見つめた。


「前にお話しした時、もしかしたら好きなのでは…と思い買っていたんです。宜しければ皆で食べて下さい。」

「ありがとうございます。そう言えば…もう少し先の街のお菓子が…」


女の子はお菓子は別腹と言うが、それが本当かどうかは別として…


「いやぁーいいねぇ。」

「えぇ。同い年くらいのお友達がいるのはいいことですね」

「それ、完全にオフクロ目線じゃねーか」

「悟浄は違うんですか?」

「八百鼡はいつまで敵と馴れ合ってるんだ」

「紅…まぁたまにはいいじゃねぇか。」

「なぁ、三蔵…俺もあれ食いてぇ」

「ハゲ三蔵。オイラもあれ食いたい」

「お前らはなぁ……」


わらわらと三蔵に集るお子様に青筋を立てながらも、ちゃんともう一袋用意しているところが三蔵らしいと言うかなんと言うか……。


「李厘様ー!」

「なーに?」


八百鼡によばれてパタパタとそっちに駆けて行く李厘を見つめている名無しさんが目に入った。
妹の様に見ていて、でもどことなく距離を取っていて……

それは八百鼡が名無しさんに対する視線も一緒で、敵だとはわかりつつも悪い奴ではないとわかっているからこそ互いの距離感を測りかねているのだろう。


「名無しさん、出発機するってよ」

「八百鼡、行くぞ」

「「はい」」


少しだけ名残惜しそうに背を向ける二人に、何となく罪悪感を感じたが本人達は至って清々しい顔だった。


背を向けたらお互い敵同士だが、たまには……こう言うのもいいのか、とも思った互いのリーダーであった。


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