短編、番外編

□噂の…
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「煙草」


胸元にしまった煙草がもうなくなったことに今更気付いた。


「……」


静まり返った部屋の中で、煙草を求めた手が自然とあいつがいた席に向いていたことに苦笑と舌打ちを漏らした。

だが、まだ帰って来そうにないあいつを……迎えに行くついでに煙草も買いに行こうと新聞を置いて立ち上がった。


「ねぇ見た?」

「うんうん!!イケメンだった。爽やかな笑顔が似あう黒髪さん」


「おい、見たか?」

「あぁ…可愛かった!!神秘的な美しさの銀髪の子」



「"町を賑わす美男美女の旅人カップル"」


特に気にしていた訳ではないが、容易に想像がついてしまい思わず咥えていた最後の煙草を落としてしまった。


「……あいつに渡してやるかっての」


本来の目的も忘れ、足は自然と人集りが出来ている方へと向かっていた。





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