短編、番外編

□誕生日
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「女、煙草、酒、博打」

「何ですか、それ」


八戒の買い出しに付き添っている途中、突然指折りしながらろくでもない単語を出し始めた彼女。

この単語から連想されるのは言わずもがな、


「悟浄の好きなモノって何かなぁーって上げてみたら、これしか浮ばなくて」

「強ち間違いではありませんが……どうしたんです?」

「ほら、もうすぐじゃん!悟浄の誕生日」


そう言われてみれば、そろそろ10月も終わりに
近付いてきて今度は紅葉の季節だ。
悟浄と三年ほど二人で暮らして来たが互いに行事事何て気にしたことはなかった。

ましてや誕生日何て……

また真剣に悩み出す美樹に、八戒も一緒になって悟浄の好きなものを考えてみた。


「やっぱりここは……女友達を紹介するしかないのかな」

「……何故そこへ行き着いたんです?」

「悟浄が一番好きなものって……"女"でしょ?あと他に思い付かないし……」


彼女の事だ。次はどの友達を紹介しようか…と違う方向に考え出しそう。

誕生日をいちいち覚えておくほど好きなはずなのに、そう言うところ不器用で…隣を歩く彼女は少しだけ悟浄と重なって見えた。

それに、本当に女友達を紹介されたんじゃ悟浄だって可哀想過ぎる。


「明日…だよどうしよう」

「でしたら、明日も回りますか?三蔵は二、三日ここにいる予定だって言ってましたし」

「本当に!?八戒ありがと!!」


プレゼント候補を探しまわっていて、遅くなったのに苛立った悟浄の灰皿が煙草でいっぱいだったことに苦笑を漏らした。



――――――――――



「夕方には戻ってきますので」

「じゃぁ行ってきます!八戒行こう」


昨日も二人で買い物してたって言うのに、今日も出払った二人。
示し合わせた様に「買い出し」と言ってのけるもんだから追求も出来なかった。

別に買い出しが悪いんじゃないだた……


「俺は付いて来んなって、どういう事だよ……ったく」


荷物持ちを買って出たのに、あっさり断られた。


「八戒の方が良いってか?」

「……でけぇ独り言だな。」

「んだよ」

「暇なんだったら煙草でも買ってこい」

「………余計な世話だっての」


おせっかいなど焼かない三蔵に気遣われたことに苦笑を漏らしつつ、宿屋を後にした。



――――――――



「ねぇ、このたこ焼き美味しいよ!って……八戒?」


露店に出ていたたこ焼きを買食いしていところ、どうやら八戒とはぐれてしまったらしい。

宿の場所はわかるし、私も迷子になる歳でもない。爪楊枝に刺したたこ焼きを口に放おりながら雑貨屋などを見て回った。


「うーん……」

「そこの可愛いお嬢さん、一緒にお茶でもどう?」

「悟浄!!はいっ。あーんは?」


絶対聞き間違いなどしない、心地良い低音の声に少なからず、嬉しさを覚えた。

最後の1つだったたこ焼きを爪楊枝に刺して悟浄の口の前まで持っていくと、パクリとそれを口に含み「うまいねぇ」と関心した様に呟いた。


「あ、そっか!!」

「なーに?」

「悟浄デートしよ、デート!私がエスコートしまーす。なんちゃって」


彼の返事を聞かないうちに手を引っ張るフリしてさり気なく手を繋いだ。

多分、これだけでも顔が赤くなってる。でもそんなの絶対に見せられないから後を振り向かない様に、彼よりリーチの短い足を最大限に駆使して彼の少し前を歩いた。


「ねぇ。俺さ……手、繋ぐなら」

「え?」

「こっちのがいいんだけどなぁ」


ぱっと放されたと思ったのも束の間、指を絡め取られて所謂恋人繋ぎになった。
思わず悟浄を見上げた顔を「真っ赤」と指摘されても、そこには言い返す気力もなくただただ「うん」と頷いて手を握り返した。






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