短編、番外編
□趣味嗜好
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「さて、約束は守ってもらいますよ」
「約束って……私は約束した覚えないんだ……けど…なぁ」
有無を言わさない八戒の黒い笑顔に反抗しようと発した言葉の語尾を弱めざるを得なかった。
「今日こそはヤラせてもらいますよ?服を着たままで」
「…ッ……」
怒らせたら一番怖いであろう彼に逆らうことも出来ず、私が好きになった笑顔でこちらに詰め寄ってくる彼を受け入れるのだった。
「ンっ……はむっ……」
「……ンッ……」
後ろ向きで私を壁に追い詰め、左手でセーターの下から手を入れてブラの隙間から胸を揉みしだきながらの私の唇を貪った。
行為に及ぶ時いつもは互いに生まれたままの姿なのが多いが、八戒の趣味なのか服を着たままでしたいと言われたのだ。
皺になるし、汚れるし……それに何だか逆に恥ずかしいと言う理由で私は嫌なのだが、八戒はそれがいいらしい。
「はぁ……いいですね。」
「ふンっ……な、にが?」
「タートルネックにタイトスカートを中途半端に乱してる感じ……そそりませんか?」
"変態"と罵る様な目線を送っても彼を興奮させる要素の一つでしかなかった。
「ひゃぁ……っ」
「もう濡れていますね。……興奮しました?」
ショーツをずらし、突如隙間から侵入してきた二本の指に声を荒げた。
同時に先程からの弄られている胸への愛撫と耳への囁きの余韻のせいで、自分でもいつも以上に興奮しているのが分かる。
「腰、揺れてますよ。誘ってるんですか?」
「も、きて……」
理性よりも欲が勝り、自分の右手を後から覆い被さる様に抱き着いている八戒の首に回し、キスを強張った。
「ンっはぁ……いつの間に、あなたはそんなにお強請り上手になったんですか?」
「あァんっ……お願い…欲しいの…ンあァァあぁ!!」
私の言葉が終わらないうちに八戒の大きく滾ったモノが私の胎内に侵入してきた。
「ぁ、あっ…あぁンっ!」
八戒の腰の動きに合わせて途切れ途切れに出る喘ぎ声。
私よりも私の身体を知り尽くした八戒が的確にイイところを突きながら指先では敏感な所を転がした。
「も、もう…イっちゃ……」
「一緒に、イきましょうか」
昇天を促す様に腰の動きを早め私を追い立てた。
「はぁンっ…ァァあぁあっあ……!!」
「っ」
余りの大きな快感に私は身体を大きく仰け反らせながら達した。
その後を追うように数度私の中を大きくグラインドさせた後胎内から性器を取り出し、私の服越しに背中に精液をかけながら八戒も達した。
――――――
「怒ってますか?」
「……」
怒っているか、と聞かれたら欲望に負けてしまった為怒りたくても怒れないでいる自分がいた。
だが、それでもだ!
「あの服、昨日買ったばっかりなのに……」
「すみません…」
「スカートもお気に入りだったし」
シーツを胸元までたくし上げ、八戒の分までぶん取りつつ背中を向けた。
文句を言うどころか、謝りながら私の体を労る彼に少なからず罪悪感を覚える。
「明日、買って。同じ服…」
「はい」
「後、クレープ食べたい」
「はい」
「あと……キスして。」
「はい」
その後元気になってしまった八戒にもう一回戦を強いられて、次の日に買い物に行けなかったのは言うまでもない。
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