短編、番外編

□駆け引き
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「どうしてさ、光明のとこにいくの?」

「いけないことでしょうか?」

「キミがそうしたいなら、いいんじゃないかな?」


彼女を保護していた剛内三蔵法師が亡くなり、光明が引き取った。

彼を父親の様に慕っていた彼女にとって、僕は復讐するべき相手なのか?と聞いたことがあったが首を横にふった。


「私、貴方のことが好きなんです。」


飄々としていて、絶対に手に入らなさそうで。だから……もっと好きになる前に貴方の前から姿を消します。


そう言った彼女は、それ以来自分からは連絡を一切寄越さない癖に、ただ「光明様の所でお世話になります」とだけ言ってこの寺を去った。


その言葉にまんまと羽目られて今は自分から会いに行っているんだから人間は変わるものだとつくづく思う。


「ねぇ、まだ僕のこと好き?」

「さあ。烏哭様はどうだったらいいですか?」

「好きだったら、嬉しいかな」


そう言うと微笑みを浮かべて僕のお猪口に徳利を傾けた。

僕を好きだと言いつつも絶対に僕には靡かなかった。

本当に捕まったのはどっちだろうか。




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