短編、番外編
□ポッキーの日
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「ねぇ、さーんぞ!!」
紅葉も散り、落ち葉が旋風に舞っている中長安にある慶雲院の扉を叩いた。
特に用はなかった。
いや、無いわけではないのだ。強いて言うなら「顔を見に来た」である。
私からしてみればそれも立派な用事だが、三蔵には「くだらねぇ」といつも一介される。
だから今日はちゃんと用事を作ってきたのだ。
「ポッキーゲームしよ」
ポッキーの箱を片手に持ちながら行儀悪く食べ歩きをして三蔵の部屋に入る。
チョコレートが付いていない方を咥えて、三蔵の机越しに身を乗り出す様にすると、無言で私の咥えたポッキーを食べ進めた。
「ッ…///」
絶対に拒絶されると思っていたから、三蔵の思ってもいない行動に思考が追いつかず、口を離すことも出来ずに最初と同じ位置のままで固まっていた。
「……ぁ……」
そうこうしているうちにパクりと唇ごと食べられて、咄嗟に離れようとしたが後頭部に回った三蔵の手に逃げ場を阻まれて、成す術無く口内を動き回る三蔵の舌に翻弄されるしかなかった。
「はぁ、はぁ……」
満足したのか、やっと私を開放した三蔵が今度は煙草を咥えながらしたり顔でこちらを見上げた。
「キスして欲しかったんなら、そう言え」
「……っ!〜ッ…ばかっ」
その後三蔵の自室入ってきた悟空に紅い顔を指摘されるのは後の話だ。
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