短編、番外編

□第三夜【上】
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祭りと言っても夏にある大きな祭りとは違い、秋の収穫祭の様なものだった。

畑や田んぼで獲れたものを神棚に見立てた手作りの棚に起き、金山寺からお坊さんを呼んで拝んで貰う、と言うのが通例だった。

だが年々露店やら屋台が並ぶ程の大盛況で、夏の祭りくらいには盛り上がっている。


「……」


それをふまえた上でなのだ。


「あの、光明さm……」

「シー……静かにしてください」


金山寺にある……物置小屋に私と光明三蔵法師はいた。

それも後ろから覆い被さるように私の口を塞いだ光明様は何とも密着度が高くて……そう恥ずかしいのだ。


「江流くんが呼んでます」

「捕まったら一緒にお祭行けませんよ?」


外では彼の愛弟子の江流くんが光明様を探していた。

金山寺からお坊さんを呼ぶのが通例なのだから、最高僧である光明様がお経を読むのが当たり前なのだろうが、彼はそう言う事を嫌うのだ。


「それは……嫌ですけど……私は別に隠れる理由が……」

「あぁ、それは……」


私が貴方を少しだけ独占したかったんです。

と密着状態で言われれば、変に意識してしまう。
心臓の音が高鳴る。


「(うぅ……光明様に聞こえてなければいいけど……///)」

「(どうにか抜け駆けできないですかね。いっそこのままここにいましょうか)」


それぞれの思惑が交差する中で、秋の収穫祭開始を告げる合図が鳴り響いた。






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