HQ!夢小説

□あめ
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あめ



ひらがなで記せばどちらも想像できる。
雨は好きだ。悲しい気持ちを洗い流してくれる。飴も好きだ。甘さで気持ちが柔らかくなる。なんでこんな感傷的で詩人ぽいこと言ってるかというと

「彼氏が可愛い女の子とおしゃべりしてたって?あっそう。」

そうです。彼氏の花巻貴大くんがとてもゆるっゆるの顔して可愛い女の子(おそらく委員会同じ)と話していたんです。普通に話してるならまだ許せたのに貴大はゆるっゆるの顔して話してました。なんだあいつ。私ですら付き合い出してからしか見たことないのにゆるっゆるの顔。何度もいうけどほんとゆるっゆるの顔だった。デレデレとはまた違う。普段話すときはそんなに表情筋動かない貴大なのになんでまた。そりゃあの子が可愛いからですね。クラスが違うから会う機会も作らないとなくてたまたま見かけたから声をかけようとしたらこれだ。あまりに楽しそうだったから教室に帰ってきてしまった。そして岩泉くんとお弁当食べてた及川に愚痴ってるのが今。

コイツまともに聞いてない。ふざけんな!乙女の悩みだぞ!!

「いや、だってそんなあほらしいこと愚痴られてもため息しか出ないのに聞いてあげてるだけ徹様偉いからね?」

はいはい、徹様ありがとうございます。
とりあえず貴大にはムカついた。及川もうざいけどそんなことは普段からだからしょうがない。

最近貴大と話してない。私は帰宅部だから行く時間も帰る時間も違って挙句の果てにクラスも違うから自分から動かなければそのままだ。自然消滅もいいとこ。しかも貴大は基本的に行動派ではないから私から動かなきゃいけないのだろうけど珍しく動いた結果がこれだった。泣ける。

「松岡これでも食って元気出せよ」

岩泉くんありがとう。
餌付けか、と突っ込んでみたけど岩泉くんに関しては好意でやってくれたものだと明らかにわかったので取り下げた。彼がくれたのはレモン味の飴だった。美味しい。そういえば初恋ってレモン味だっけ。私にとって貴大は初恋で。貴大はどうかは知らないけどどうだっていいのだ。昔が気にならないわけじゃないけど気にしてもしょうがないこともある。重い女と思われたくないのだ。求めすぎて飽きられたら困る。私は貴大のことがとてつもなく好きなのです。

「それさぁ、いつもいつも俺らに言わないで本人に言えば?めんどくさいし」

本人に言えたらどれだけ良いか。言えるわけない。

「ほんとお前めんどくさいね〜」

ケータイを片手にいじりながら及川はため息をはいた。彼女にふられた及川くんに言われたくないですよ。むしゃくしゃしたので及川のセットされた髪をぐちゃぐちゃにしてやる。と、その手を突然誰かに掴まれ後ろに引っ張られた。

「うぇっ!?」
「近い。」

この声は貴大?恐る恐る上を見てみるとさっきまでゆるっゆるの顔で可愛い女の子とおしゃべりしてた我が彼氏花巻貴大さんだった。

「待ってマッキー俺悪くないからね?こいつが勝手にやってきただけなんだからね?ね?聞いてる??」

及川が顔を真っ青にしながら弁解する。イケメン台無しだ。ざまみろ。心の中でキシシと笑っているとさきほど掴まれた腕をそのままに貴大が踵を返して歩き出した。掴まれたままなのだから引っ張られるのは当然な結果な訳でどうしたの?とか聞いてる?とか聞いても貴大は答えてくれないし速度を緩めてくれなかった。身長が高い分歩幅のリーチもでかいのは分かってる筈なのに。いつもならこんな事しないのに。掴まれた腕を無理矢理振り払った。

「痛い」
「....ごめん」
「怒ってるの」
「怒ってなくはない」
「なんなの」
「嫉妬?」

........は?え?嫉妬??
呆気にとられて何も言わない私を余所に貴大は言葉を続けた。

「最近華奈及川と仲良くしすぎ。近いしムカつく。俺といるときそんなに笑わないくせに及川といる時はよく笑うしいつも一緒にいるだろ。」
「え、ちょっと待って違うよ」
「何が」
「及川と仲がいいのは去年も同じクラスだったからだしいつも一緒にいるのは貴大の友達だからだし貴大と一緒にいるときも笑ってるよ?」
「少ない」

何なのだ。ほんとにコイツ何なのだ。貴大と一緒にいるとき笑ってない?そんなの緊張してるからに決まってる。好きだから緊張するのだ。こんな可愛くない性格した私でも大好きな彼といるときは緊張する。今だって内心バックバクだ。分かれよ鈍感。というか。

「貴大だって私といるときそんなに笑わないじゃん。もともと表情少ないのは知ってるしいいけど、いや良くないけど、さっき可愛い女の子にゆるっゆるの顔してた。人の事言えないじゃん。」
「あぁ、あれ?お前の話してたから」
「は?」
「お前がどんだけ可愛いかって話しをしてた。あいつお前のこと好きだから」
「いや、私さっき貴大が話してた女の子のこと言ってる」

答えが明らかに噛み合ってない。
私はさっき貴大がゆるっゆるの顔して話してた女の子の話。貴大はまた別の人?の話だろう。

「いや、だからソイツとお前がどんだけ可愛いかって」
「え?話題もおかしいけど相手もおかしくない?」
「あいつお前狙ってるから阻止しないとと思って華奈の魅力話してたら盛り上がった。それだけ。」

イマイチ状況が整理できない。さきほど貴大とおしゃべりしていた可愛い女の子は私を狙ってる?ん?何かおかしくないだろうか。レズ?うん、それは置いといて。魅力話してたら盛り上がったとはどういう.....

「顔真っ赤」
「だ、だってそんな恥ずかしいこと」

意味がわかって頬が熱くなる。貴大は廊下で可愛い女の子にわたしのことを話していたのだ。あのゆるっゆるの顔して。

「可愛い」
「....っ!!」

すごく穏やかで今まで一度も見たことないような笑顔をして貴大は私の頬をなでた。

「朝も帰りも一緒じゃないしクラスも違うから不安だよ。華奈可愛いし。会いに来てくれないの」
「だ、だって重くない?」
「全然」

いつになく饒舌な貴大は頬をなでたり髪を梳いたりしながら今まで私が我慢してたことを求めた。

「むしろ来てほしいくらいだし俺からも行くしそれでいい?」

恥ずかしすぎてあげられない顔をそのままに頷く。

「あと俺といるときも笑ってよ。華奈の笑った顔好きだし」
「笑わないわけじゃ、なくて」
「うん」
「き、緊張する...」

....無言。
私なにかまずいこと言っただろうか。嫌われるようなことを言ったのか。俯いて下がった視線をちらりと貴大に移すと真顔で私を見ていた。

「た、貴大?」
「何なのお前」
「へ?」
「可愛すぎデショ。顔真っ赤にしてそんなこというとか誘ってんの」
「え、や、ちが、うわっ」

グイッと腕を引っ張られ貴大に抱きしめられる。これはまずい。恥ずかしすぎて全身の血液沸騰しそうだ。

「好きだから。だから遠慮しないでもっと甘えてよ。俺だって寂しい」
「う、うん、頑張る」
「お前は?俺のことどう思ってるの」
「えっ」
「言ってよ」
「.........好き」

聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声で言った。むしろそれしかむりだった。恥ずかしい。だが貴大にはしっかり聞こえたようで、うん、と一言いうとさっきよりも強い力でまた抱きしめてくれた。

とまぁこの機会に私は前よりももっと貴大のことを大好きになったわけだが教室に帰ってから後をつけて事の始終を全て聞いていた及川にさんざんからかわれしまいにはおめでとうと言われたときにはほんとに穴があったら入りたい気分だった。




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