悲しみの先にあるもの
□努力
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そして遂に、運命のテストの日がやってきた。
別に俺にとって運命ではない。
あいつにとってだ。
出かけることが第一じゃない。
まずはいい点を取れるようにしないと、でかけることすらできない。
あの日を機に、更に厳しく勉強を教えた。つもりだ。あいつは理解しているのかどうか、はっきり分かっていない。
が、俺の教え方は下手な方ではないと思うから、50点以上はとれるだろう。
夏休みの補修の時間を使って、テストを行なっている。
俺は暇だから、廊下に掲示されている掲示物を見て、時間を潰しながらアヤノを待っていた。
一時間後、バテた様子でアヤノが出てきた。
手応えがあったのか、
それとも全くダメだったのか、
わからない。
「ど、どうだった?ちゃんとできたか?」
オロオロした様子で俺が聞くと、
「ふふ…手応えありだよ!」
と、嬉しそうに答えた。
テストが帰ってくるのが、三日後なので、少し時間がある。
でも約束は50点以上とったら。
だからまだでかけられない。
…この言い方だと俺が出かけるのを楽しみにしてしまってる言い方だ。
俺はなんにも楽しみにはしていない。
50点以上を取って欲しいだなんて。
そんなの、思ってはいない。
帰り道。
「あー!今日は頑張った!三日後がまちどおしいよー!あ、50点以上だったら…覚えてるよね?ふふっ」
「はいはい。覚えてますよ。出かけるんだろ?三日後がたのしみですね」
棒読みで言った。
「むー…!頑張ったのにー!もういいもん!シンタローには荷物持ちしてもらうしっ!」
なんて、くだらない会話をして、分かれ道が来た。
「じゃあね。三日後、学校来てね!」
「おう。じゃあな」
そして二人は違う道を進んだ。
じゃあね、なんて、また会おうと言っているようなもんじゃないか。
そんな言葉使ったのなんて、とても久しぶりなような気がする。
俺には縁のないと言うか、誰にも言うことのなかった言葉。
そう考えたら、また明日という言葉が何やら特別な言葉に思えてくる。
まぁ、無駄なことは考えずに、三日後を祈ろう。
今日は寄り道せずにまっすぐ家に帰ることにしよう。