gift

□mistake
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窓から差し込む月明かりだけが

私に優しくしてくれる様。


…どうしてこんな事になって

しまったのか。

私はベッドに入り、1人思案に

暮れる。




私が悪いのは間違いないんだけど。



間違いはどこから起きたのか…




そう、この事件は数時間前に起きた。









ゆらゆらとした視界の中に、


痩せ気味で筋肉質な身体に

黒い短い髪が入る。


「ねぇ、キスして?」


その男に寄りかかり、ゆっくりと

手を伸ばし、男の首に手を

回すと、合わせられた唇。



うっとりと男とキスをしながら、

揺れる視界の数メートル先に

見えたもの。


揺れる視界が一瞬止まる。




今、キスしているはずの男が…

そこに、いる。




「???!!!」



驚き、今キスをしている男から

離れると、



「ルフィ?!!」


そこには私の恋人ではない男が

平然な顔をして立っていた。



「何だよ、ナミ。」




!!!!!


今まで揺らいでいた視界の焦点が

一気に合う。

くらくらする頭で今の状況をまとめ

ようとするがまとまらない。






「…てめぇら、何やってんだ?!」



数メートル先にいた男はゆっくりと

近寄ってくる。


その男が1歩1歩の歩み寄りが

私の寿命を1日ずつ縮めている

のではないのだろうかと思うほど

心臓が縮こまる。



「違うの!!

間違ったの!!」


近づいてくる男に迫力に思わず、

後退りするがそれも上手く出来ず、

ふらふらと倒れそうになった。


「あぶねぇ!」


ルフィは咄嗟によろけた私を

抱きかかえる。


その姿が、さらに男の怒りを助長

させてしまった様で…




「てめぇら!許さねぇ!!」


私の恋人は手荒に私をルフィから

奪い取り、全身から怒りを溢れ出

させる。



「ち、違うの!

酔っててルフィとローを間違

ったの!」



「間違うだぁ!?

てめぇのその目は何の為に

ついてんだ!?


麦わら屋とおれじゃ身長も顔も全く

違うじゃねぇか!」








今日は、物資補給の為にある島に

立ち寄り、この港で1泊する事に

なった。



普段、船の上だと天候が気になって、

ここまで酔わないんだけど、珍しい

お酒が手に入ったのと、久しぶりに

安心して飲めるので、ついつい飲み

過ぎてしまい、周りが分からない程の

酩酊状態になってしまった。




「トラ男、そんなに怒るなよ。」


ルフィは怒り狂う男をなだめ様と

ローの肩に優しく手を置いた。

あぁ、こういう時はやっぱり船長ね。



そして、満面の笑みで、

フォローする。



「ナミは酒に酔うとそうなる。


よくある事だ。」


!!!


「はぁ?!よくある事だと?!」



一気に鬼の様に表情が変わるローに、



「きゃぁぁぁ!何て事言うのよ!!」


とりあえず叫び慌てる事しか出来ない

私。


フォローするどころか、火に油を

注ぐルフィの口を塞ぎたいが、

ローに自由を奪われ、身動きが

とれない。


「てめぇ、ナミ!どういう事だ!

酔うとおれと麦わら屋を

間違うってのか?!」


「今日だけ!今日だけよ!

髪が黒くて、何となく

間違ったのっ!」



必死に弁解する私に怒りが収まらない

様子のロー。


見かねたのか…再びルフィが

考えなしのフォローを入れる。



「もう、いいじゃねぇか。

たまに酔って間違うくらい…」



「“たまに”だと!?」



言い方を変えただけで、さらに

火に油を注ぐ。



「あぁぁぁぁ!!

もう、あんたは黙って!!」



「この淫乱が!

酔うと誰とでもキスするのか?!」


ローは私の顎を掴み、顔を

近づける。


凄まじい迫力に、思わず目を閉じる。


絶体絶命とはこの事を言うのだろう…


現場を押さえられ、身柄拘束され…


誰か…タスケテ…ッ!!



私の祈りが神様に通じたのか…


…いや通じてないのだろうけど…



考えなし男が再び助け舟を出した。



「トラ男、そんなにナミを責めるな。

ナミは酔うと誰とでもキスしてる

訳じゃねぇ。


お前とおれを間違ってるだけ

だから、キスしたりしてくるのは

おれにだけだ。」



「!!!!!!」



「!!!


きゃぁぁぁぁぁぁっ!!

頼むから、あんたは喋らないでっ!!」



神様…この男の助け船だけはいらな

かったわ…とんだ泥船…


見事沈没…





「てめぇはどんだけ判断能力が

ねぇんだよ!



いくら酔ってるからって、常習的じゃ

ねぇか!

この淫乱女が!」



「…すみません…」


ルフィの軽い口を恨みながらも

もう、謝るしか術がない。




たまになのよ?


間違うのは…


そんなに酔うのもたまにだし…



しゅんとなる私を見て、ローは

一瞬目を優しくさせたが、私を

乱暴に突き放した。



「…


…もういい。


おれは寝る!」





どすどすと足音を立てて、船内に

消えていった。




私とルフィは無言で目を合わせる。



「…トラ男…怒ってんな…」


「…ルフィ…お願いだらか…

こういう時は黙ってて…?」



ルフィに今更遅いお願いをし、

とぼとぼと私は女部屋へ帰った。
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