ルナミ置き場

□デート
1ページ/3ページ



「島だーーー!!」




定位置の船首から我が船の船長が

叫ぶ。


地平線に薄らと浮かび上がった島。


冒険好きの船長は大きく口を開き、

希望に瞳を輝かせる。



でも、残念ね。


今回の目的は物資の補給。

それに、事前調査でも島の

安全は確証済み。


ウソップの

“島に入ってはいけない病”も

発症しないわ。



ルフィの求める

冒険や刺激は無いはずよ。


まぁ、そんな事いってもルフィには

分からないでしょうけど。



嬉しそうなルフィを見て

私は少し微笑む。


どんな状況であれ、

島を見たルフィの口から

出る言葉といったら…









「デートだーーーー!!」




!!???


えーーー?!!

そこは“冒険だー!”でしょ?!



ルフィの叫びにただ事ではないと

クルー達が集まってきた。



「ルフィ!

何か悪いものでも食べたのか?!」


ウソップは心配そうに尋ねる。


「??悪いもの?

何言ってんだ?」


ルフィは皆の驚きなんて何のその、

ケロっとした顔で答える。



「ねぇ、ルフィ…

私の聞き間違いだとは思うけど…

今、“デート”って言った?」


ロビンは無表情に少し

わなわなと震える。


その驚き…分かるわ…


「あぁ!言ったぞ、デート!」


!!!!!

再び、ルフィの口から出された

言葉にもう耳を疑う余地もない…



ルフィが…!


デート?!!




「…おい、ルフィ…

デートって意味分かってんのか?」


落ち着く為だろう、サンジ君が

たばこを1本銜え、ルフィに

尋ねた。


「男と女が一緒に出掛ける事だろ?」


「まぁ…そうだが…」


動揺は隠せないようで煙草に火を

つけようするも、手が震えて

上手く火がつかない。

カチカチとライターの音が

サンジ君の焦りを表している

様だわ。



「一緒に出掛けて、ウロウロしたり、

手を繋いだり…」


「まぁ…そうだが…」


「好きだと言ったり、唇合わせたり、

性交したり…」


「ちょと、待て!!

そうだが、後半は聞き捨てなら

ねぇ!!」


ルフィの口から出された意外な

言葉にサンジ君はいきり立つ。



私…


ショック過ぎて

一瞬、目眩に襲われたわ…




「まぁまぁ、サンジ」


フランキーがサンジ君をなだめ、

ルフィとの間に割って入る。


「何とデートするんだ?

ちゃんと、言葉喋れるのか?」


「あぁ、ちゃんと喋るぞ。」


「服は着てるのか?」


「…着てるぞ。少しだけど。」


「少しって何だ?変態か?

まぁいい…。


2本足で歩けるか?」


「…


…失敬な!


おれだって人間の女とデートくらい

する!!」



人間の女?!



いや、普通の19歳の健全な男子だと

思うと当たり前なんだけど、

ルフィだとあり得ないわ!!




驚きのあまり静まり返る船…



「相手は誰なんだ?」


沈黙を破ったのはゾロ。

そうそう、私もそれを聞きたい。


「それは…言えねぇ。」


「そうか…」






えっ!?



質問、終わり?!!


ゾロ、もっと頑張ってよ!!


そこ、一番大事!!


男同士ってそういう所、

深入りしないのね…!



でも、

そこは聞いて欲しい所だわ!



「じゃぁ、ヒント教えてよ。」


ロビンが私にウインクして、

質問を続けた。


ありがとう!ロビン!



そう、実は密かに思い続けている…

私の一方的な片思い。


ルフィは恋愛なんて興味がなさそう

だし、傍にいられたら私も幸せ

だから自分の気持ちはしまっていた。


でも、私の中のそのセオリーは今

破られそうになっている。


ルフィだって、恋愛するんだ…



「ヒント?」


「そう。ヒント。

あたなのお相手さんに興味が

あるの。

名前は言わなくてもいいわ。



その人は、私達の知ってる人?」



「あぁ、知ってるぞ。」



「髪は?長い?」


「あぁ、なげぇな。」


「顔は美人?」


「そうだな。皆、そう言ってる。」


「性格は?優しいの?」


「優しいと言えば、

そうなんだろうけど怖ぇ時もある。」


「怖いの?あなたが?」


「すぐ怒るし…たまに怖ぇ。」


「そう…」


ロビン、無表情だけど

驚いてるわ!

ルフィが怖がるなんて…!

相当な強妻になりそうね、

その人!



「あなたが怖がるほど強いの?」


「そうだな。おれより強い。」


!!!!!

ルフィより強いの?!

その女の人、どれだけ強いのよ?!



「強くて怖いその人のルフィは

どこが好きなの?」


「うーん…

笑った顏だな!」


…意外に普通の理由。

でもそうね、普段怖い人が笑うと

グッとくるものね。


「なぁ、もういいだろ?

島に着きそうだからさ。」


フーとため息をつき、何だか

ちょっと大人顔…。



「…



…えぇ…ありがとう…」


さすがのロビンも無表情に

驚きを隠せないようで…


それから島に着くまで、誰一人

言葉を口にしなかった。


皆それぞれショックを受けている

のね…




ルフィがデート…



こんな日が来るとは思わなかった。



ルフィのくせに…




島に着くとルフィはいそいそと

出掛けて行った。

…出掛けるというかいつも通り

飛び出して行った。


ルフィのいなくなったサニー号では

当然の様にさっきの話題について

皆で話し合うことになった。


「なぁ、ルフィの相手って…

おれ達の知ってる奴って

言っていたけど…」


ルフィが出掛けるのを待ってました

とばかりに、ウソップが口を

開いた。



「…さぁな。

ルフィからのヒントで

考えられるのは…」


さっきより落ち着きを取り戻した

サンジ君が煙草をふかす。


それぞれが、今まで出会った

女性を思い浮かべる。



少し、皆で考えて、

フランキーがぼそりと呟いた。


「…

女帝…か?」




!!



「…そうだな。

向こうもルフィに好意的な様だし。」


サンジ君はフーっと口から煙を

細く吹き出した。



女帝…




シャボンディ諸島で私達の出航を

手助けしてくれた人ね。



確かに、髪は長いし、美人だし、

怖そうだわ…

それに王下七武海やってるくらい

だらか、きっと強いんだろうし…

笑った顔は知らないけど、

可愛かったりするのかしら。



しかし…デート…




「まぁ、いいじゃねぇか。


ルフィも男って事さ。

おれは昼寝する。」


ゾロは一つあくびをして立ち

上がった。


それを合図に他の仲間も

バラバラと立ち上がった。




いちクルーとしては船長の恋愛の

一つや二つ、別にいい事なん

だけど、女としてだったら、

ただ事ではない。


よからぬ不安が胸の中をうごめく。




このまま船にいても、きっと

落ち込む一方だわ。


私は皆みたいに他人事じゃ

済まされないのよ。




「私、買い物に行ってくる。」



不安から逃げる様に、船から

降りた。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ