ルナミ置き場

□虜
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細身の体に羽織られた赤いベストから

見え隠れする大きく刻まれた胸の傷は

消えぬ彼の傷み。


漆黒の瞳は全てを射抜き、私の心も

撃ち抜く。


そう、出会った時から魅かれていた。


小さな身体と対照的な懐の大きさ。

何もかもを受け入れそれを包み、

守ってくれる強さと温かさ。




私は彼の虜。









「おーい!ウソップ!

釣りしようぜぇ!!」


今日も元気な船長の雄叫び。

私を虜にさせる男は子供の様にはしゃぐ。



ルフィは変わらない。

出会った時から真っ直ぐで真っ白で。

そして、どうしたものか女にモテる。

でも、ライバルは複数いてもとられる

云々の心配は皆無。

なぜなら、彼の頭の中には海賊王と肉

しかないからだ。

その現実が、さらに私の希望を暗くする。

そして、希望を失った私は…





はしゃぐ男を見て私は一つため息を

落とした。


ふと後ろに人の気配を感じ、振り返ろう

と身体を翻そうとしたがその前に後ろ

からふわりと大きな腕で包まれた。


汗にまみれた大きな腕はそれが誰だか

予測させるのに充分。



頭だけ振り返ると、そこには

トレーニングをしていたのだろう、

汗にまみれたゾロが流れる汗を拭く事も

せずに、私を包み込んでいた。


「どうした、ボーっとあいつらを見て。」


「どうもしないわ。

ただ、楽しそうだな〜って思ってね。」


「そうか。」


少し微笑むと、ゾロは腕に力を込めて

私を抱きしめた。


「ちょっと、汗がついちゃうじゃな

いの!」


「いいじゃねぇか。

一緒に風呂入ろうぜ。」



「…もう…っ!」


ゾロは私の肩を抱き、浴室へ足を向ける。

そして、そこで待つのは甘い時間。








虜…



だった…



でも、明けない夜に私はしびれを

切らして負けてしまったのだ。



次の恋に行こう…と。


揺らいでいた想いを決定づけさせて

くれたのは、



「おれにしろ。

おれはお前を裏切らねェ。」



ゾロの真剣な言葉と眼差しだった。





忘れよう。

忘れよう…。




そして、愛するのだ。

私を愛してくれる大切にしてくれる、

この人を。



きっと、この人なら私、幸せになれる…
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