ローナミ置き場

□逃げたい男
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青い空と海に

予測のできない嵐にサイクロン


寒いかと思えば暑くなる

目まぐるしく変わる気候




そんな中、航海を続ける私達の船。




肉と冒険に目のないやたらと伸びる船長に


筋トレと睡眠ばかりしている片目の剣士


手先が器用で言えば何でも作って

くれる長鼻…いや狙撃手に


私を見れば目がハートになり飛んでくる

舎弟…いやいや、コック


私のお姉さん的存在で、この船で唯一

まともに話ができる美人考古学者


照れ屋の可愛い船医に変態な船大工


そして、なぜか骨…



いつも通りの私の航海

いつも通りの日常…



のはずだったのに!




「おい、ナミ屋。」


私を呼び止めたのは王下七武海、

死の外科医トラファルガー・ロー



「あら、トラ男君。

今日も、目の下の隈が素敵ね。」


「てめ…喧嘩売ってるのか…!」


ヒクリと口角が歪む。


「まさか。ただの挨拶よ?」


じゃ!と私はそそくさとその場を

去ろうとしたが、がしりと腕を

掴まれてしまった。



「…な、何?」


「逃げんじゃねぇ。」


「…」


逃げたい


私はこの男から逃げたいの!



私のいつもの日常を壊したこの男から

逃げたい!




「何をそんなにビクついてるんだ。

とって食おうってんじゃねぇんだ。」


「わ、分かってるわよ!」


「ドレスローザに行く前に物資を

揃えておきたいから、島に寄れ。」


「…それはルフィに言ってよ!!

この船の船長はルフィだし、

進路を決めるのもルフィなの。


私はあんたの航海士じゃないわ!」



掴まれた腕を振りほどき、


脱兎…のごとく逃げた。



どうしちゃたのよ、私!!



男を振り回すのはお手の物。

利用するだけ利用して、ちょっとお礼に

悪戯に微笑めばそれで終了。


…これが、私だったのに!


それなのに、あの隈だらけなのに

虎みたいに鋭い目で見られたら


振り回すどころか!

利用するどころか!


目が合う…それだけで、逃げたくなる。



…とにかく、同盟が終了するまでの

辛抱だわ。


それまで、逃げよう。


得意だし。


逃げるの。





「ナミ〜!」

甲板から船長の声がする。


「何?!ルフィ!!」

いつもの船長の呼び声に安堵感を覚え

私は甲板に向かった。










「島に上陸するの?」


「あぁ、トラ男が揃えておきたい物が

あるんだとよ。」


「はいはい。」


私はログポーズを覗き、

フランキーに舵の指示をする。


いつも通りの光景。

航海は順調。


順調でないのは私だけ。



ほどなくして、島が見えてきた。


「おー!冒険だぁー!」


物資を調達する目的なのに、いつも

通り島を見るとはしゃぐルフィ。


「…麦わら屋。あの島への目的は物資の

調達だ。

物資を調達したらすぐに出航する。」


ばっさり切り捨てられ、

ちぇ…っと舌うちをしてつまらなさそうな

ルフィ。


「時間のロスを防ぐために最小限の

人数で島に降りよう。」


テキパキと段取りを決めるトラ男君。

…これじゃ、誰が船長かわかりゃしない。

あ、彼も船長か…。


「島に降りるのは、おれと、


そうだな…



ナミ屋。」


「はぁっ?!」


「ついて来い。」


何故、命令形?!

人の気も知らないで!!


「い、嫌よ!!」


「お前がこの船の金は握ってるんだろう?」


「…そうだけど…」


「悪いが、今、おれは金を持ってねぇ。

ゾウに行けばおれの仲間がいるから、

それまで、物資の調達は頼む。」


「えぇぇっ?!何それ?!

ちょっと、ルフィ!」


2人で行くばかりかお金まで出せって、

どういう了見?!

怒りに震え、ルフィを見るが、


「ん?」


相変わらず、あっけらかんとした船長。


「仕方ねぇじゃねーか。」


あっさり。





…そうよね。


普通に考えればそうなるわね。

同盟組んでるんだし、目的が達成する

までは協力しなければ…

お金返してくれるって言ってるんだし。

利息もトイチでつけられそうだし…。


ってのはいいんだけど。




私はトラ男君から逃げたいから

一緒にってのは無理!








言いたいけど、言えない…。


この流れで言えば不自然…


「…分かったわよ。

お金は利息つけるわよ。」

ため息と共にがくりと肩を落とす。


「決まりだな。」

ニヤリと私が逃げたい男は嗤った。
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