ルナミ置き場

□デート
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不安を忘れようと船を降りて、

街へ来たものの、不安は

消えない。


繁華街は人で賑わい、

煌びやかなショーケースには

色とりどりの服や靴…小物が

並ぶ。


楽しそうに歩く人々を横目に

何だか、自分が孤独で惨めに

思えてくる。


楽しいはずの買い物も今日は

乗り気がせず、一息つこうと

カフェに立ち寄った。


紅茶を頼み、ボーっと街を

行き来している人々を眺める。

仲の良さそうなカップルが目に

入り、胸がギュッと締め付けら

れる。


ルフィ…今頃…


思わず、カップルから目を

反らし、紅茶に目を移す。


その水面に映る自分を見ると

情けなくなって涙が溢れて

きた。



フサッと軽い音がして、

頭に何か軽いものをかぶ

された。


頭に乗せられたものをとり

見ると、それは


見慣れた麦わら帽子。


ハッと顔をあげると、

そこにはいつもの笑顔の

ルフィがいた。



「ルフィ?!」


「…!

ナミ、泣いてんのか?」


私の涙に気付いたルフィは

ずいっと私に顔を近づける。


「な、泣いてなんかないっ!」


慌てて涙を拭ったけど、もう

泣いていたのは明白。


まさか、言えない。

あんたのせいで泣いていた…

なんて。


突然現れたルフィは、いつもと

変わらず、デートと言って

出掛けたのに一人の様だ。



「こんな所で何してるのよ?


あんたデートは?」


「今からだ。」


「あ、そ。」


そっけなく返事をする。

もう、ルフィの顔を直視できない。

ルフィの相手も気になるけど、

このままここに居たら増々自分が

情けなくなるわ。


私は立ち上がり、ルフィに帽子を

かぶせる。


「じゃ、私行くわ。」


立ち去ろうとすると、



「おう、行くか。」


繋がれた手。




「?!!」


ルフィの言葉と繋がれた手の

感触に驚きルフィを見ると、

白い歯をむき出しにして、

しししと笑うルフィ。


「ルフィ?!何を…」


「行くか、デート。」


「はぁっ?!」


「デートに行こう、ナミ。」


「??」


意味が分からず、少し時間が止まる。



「…


私、あんたとデートの約束なんて

してないんだけど。」



「約束してねぇけど、

来たじゃねぇか。」



「…

そ、それは…


そうだけど…」



「おれ、今日はナミとデート

するんだ!」


言い切った目の前の男に

こんな時でも、

やっぱりルフィはルフィだと、

思わず笑ってしまった。


「ナミ、行くぞ!」


強く握られた手。


「…はいはい。」


何を言っても仕方がないかという

諦めと、幸福感で私も強く手を

握り返した。




ねぇ、ルフィ。



次にデートに誘う時は

ちゃんと私に言ってね?








Fin






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