ローナミ置き場

□危険人物
2ページ/7ページ

飼っていた泥棒猫は船から逃げてしまった。

気ままに来ては逃げてゆく。


いつもの事だが、今日はいつもと

違う。



「あんたとはもう他人よ!!


今後一切、私に近寄らないで!!!」



頭の中で繰り返す、女の言葉。

いくら気まぐれな女とは言え、

今回は本気の様だ。





おれの悪い癖…


ついつい部屋の壁を見ながら、

あれこれと予想してしまい、

余計な不安を募らせてしまう。



特にあの女の事になると、

冷静な判断や予測が出来なくなる

事がある。



全くもって情けない。




少し頭を冷やすか…



おれは船長室から出てダイニングに

向かう。






ダイニングではクルー達が昼食を

摂っている最中だ。



「船長、お疲れ様です!

すぐに食事を用意します!!」


元気よく挨拶し、テキパキとおれの

食事の準備をしているのはおれの

信頼できる部下の一人、シャチ。


おれはドカリと椅子に斜めに腰かけ、

テーブルに愛刀を立てかけた。



「船長、お待たせしました。」


トレーに乗せられた食事。

いつもと変わらない食事なのだが、

今日はどうも食いたいとは思わない。


おれが、食事に手をつけないで

いると、



「どうしました?船長?

全く、食事に手を付けないなんて…




何か、ありましたか?」


シャチが気に掛ける。



「…いや、何もねぇ。

今日は食いたくねぇだけだ。」


頭を冷やすために部屋から出て

来たが、食事すら手に着かない。


…おれは重症の様だ。





「…別れたんですか?」



「!…何の事だ。」


どうしてシャチが知っているのかと

少し驚いたが、ここは平然を装う。



「さっき、大声で喧嘩してるのが

聞こえました。」


「…そうか…」


クルーに聞かれていたとは、

面倒だな。


「…で、別れたんですが?」


「さあな。」


正確にはおれは別れることを

承諾してねぇ、だ。


だが、イチイチそんな事をクルーに

説明するのも面倒だ。



「だって、ナミが

‘’あんたとはもう他人よ!‘’

って言って、その後に船長、



‘’勝手にしろ‘’って言ってません

でした?」



「…!」



「あの、船長…



もし、別れたんだったら、

おれ、

あの、


ナミいってもいいっすか?」




「てめぇっ!!!!

聞こえてたじゃなくて、聞き耳を

立ててたんじゃねぇか!!


…バラす!!」



「ひぃぃぃっ!

別れたんだったら、いいじゃないっ

すか?!



もしかして、船長、まだ未練が…」



「ROOM」


「ひぃいいい!」





シャチを容赦なくバラす。


首だけテーブルに乗せられたシャチを

見下ろすと、首だけになって必死に

平謝りしている。


「おれが帰ってくるまでここで

反省しろ。」


そう言い残し、もう1人の信頼できる

部下、ペンギンに船を留守にする

事を告げ、おれは船を降りた。




別れ話がでただけで、これだ。


信頼できるはずの部下は聞き耳を

立てる油断できない部下に。



とにかく、この状態を放置しても

良いことはなさそうだ。



おれは麦わら屋の船が停泊している

場所に足を向けた。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ