Joint-ジョイント-

□第3章
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 白服の奴が片腕を挙げると、袖から覗いた手は青白く闇に浮き、得体の知れない鈍く発光した物が立ち上る。見る間もなく、黒光りしている粒子が帯状に形態を作り、宙に無数の槍が出来上がって行く。ゼスもイリクも嫌な胸騒ぎを覚えていた。

 奴が向けてくるのは敵意ではなく獲物を前にした狂気の念だろう。口元の笑みが物語っている。何の躊躇いもなく、その片腕を振り下ろす。その動きと共に宙に作り上げた槍が一斉に地上に降り注いで来た。

 「…っ!伏せろ!!」

 思わず叫んで、近くにいたイリクとシズンを地に押し付ける。無数の短い悲鳴が響き、夜の森に再び静寂が戻ると顔を上げ、状況を確認する。


((……………!?))


 目の前で起きた光景が信じきれず、何が起きたのか理解するのに数秒はかかった。槍…いや、あれはアンテナかコードと言ったらいいか。貫かれた人間は精気を吸い取られ、肉体まで粒子化されていた。


その中にはミラの姿も含まれている。

 
自分を貫いたものを引き抜こうともがく度、肉体が霧散していく。それを目の当たりにしたイリクが負傷してる事など忘れさせる速さで素早く後ろの木まで下がり、自分を傷つけた短剣を無造作に引き抜きミラの所まで駆けつける。

 「…ミラっ!動かないで!!」

 叫びながら、引き抜いた短剣を両手で持ち、力を込めて切ろうとする。だが、どんなに切りつけても弾かれるだけで断ち切るどころか傷すらつかない。イリクの傷口から流れ出る血が辺りに散らばる。

 「イ…リク兄さん。……もういいから。」

 薄くなる自分の身体を眺めると、目に涙を溜めているにも関わらず柔らかな微笑みを作り上げた。
 
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