私のことを知らない世界に

□01:非日常(日常)
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ーー世の中、つまり世間はひろいようで狭い。だからその中でいろんな出会いもある。変人であったり、恩人だったり。けれど。

「これはちょっと変人どころではないな…」

今目の前には、ずぶ濡れに濡れた20代前半であろう男性。川で溺れていたところを助けたのだが…。

「…また失敗か」

と目を覚ますなり、残念そうに言った。…助けなきゃ良かった。というかそんなに死にたいならハサミで突き刺してやろうか。

「見たところ、どうやら君が引き上げたようだね。…それと、私は楽に死にたいんでね」

だから、そのハサミを降ろしてくれと自殺野郎がそう言い、ハサミを懐にしまう。

「…そうですか。では僕はこれでーー」
「太宰さん!また自殺ですか⁉︎」

失礼します、と言おうとしたのを白銀の少年に遮られた。また、ということは、この男はいつも自殺行為をしているのだろう。
おまけにこの男は「やあ、敦君」とヘラヘラしてやがる。

「……かーえろっと」

今日は疲れたんだ。うん。後ろで少年が何かを言っているが、気にせずに家路に着いた。

だから僕は、気づかなかった。男がにたあ、と笑っていることに。
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